カルチャーデザイン、してますか? 【#001:定義と事例】

カルチャーデザイン、してますか? 【#001:定義と事例】

カルチャーデザインという言葉、みなさんご存知でしょうか?

近年では採用時のマッチング率向上や人材の定着などを目的にインターナルブランディングの一環として実施されることが増えているようで、耳にする機会も多くなってきたのではないかと思います。

今回は企業におけるカルチャーデザインの重要性と、それをどのように形成していくべきかを、深く掘り下げてお話ししていきたいと思います!

カルチャーデザインとは?

まずはカルチャーデザインについて詳しく紐解いていきたいと思います。

カルチャーデザインとは、望ましい成果に沿った活動を意図的に計画し実行することで、組織の文化(カルチャー)を創造し洗練させるプロセスです。つまり「成功する組織のための基盤を、内側から構築すること」だと考えてください。

カルチャーデザインの歴史は、組織における文化が重要なテーマとなった70年代まで遡ることができます。1982年、組織理論家のエドガー・シャインは、「組織文化とは、ある特定のグループが外部への適応や内部統合の問題に対処する際に学習した、グループ自身によって、創られ、発見され、また発展させられた基本的仮想のパターン」と定義しました(『組織文化とリーダーシップ』エドガー・H.シャイン、訳:清水紀彦、浜田幸雄. ダイヤモンド社. 1989年)。

彼のこれまでの研究によって必ずしも組織による教化や社会化がうまくいかないことが分かったため、組織だけでなく個人にも注目するようになり、キャリアの研究も積極的に行われました。そして、 「キャリア・アンカー」という理論仕事や会社が変わったとしても個々人を貫く、船の錨(アンカー)のような普遍の基軸─が提唱されたのです。

つまり、カルチャーデザインは決して組織に属する個人を洗脳する、あるいは思考停止を促してしまうようなものではありません。むしろ、長期的には個人の「自立」を促す枠組みであるということを忘れてはいけません。

カルチャーデザインとは何か、その概要を理解したところで、組織に強力な文化を構築し、発展させるためにはどうすればよいのか。その深層に飛び込んでみましょう。


企業における文化(カルチャー)の定義

あなたの好きな企業(もしくはブランド)をちょっと思い浮かべてみてください。その企業が他と一線を画している理由は何でしょうか。

もちろん素晴らしい製品やサービスの提供も大きな理由になりますが、より一層その企業を際立たせているのは「企業文化」です。企業文化とは、その企業をユニークな存在にし、価値観や信条を定義し、従業員の行動を導くものです。

つまり、企業におけるカルチャーデザインとは、企業文化を意図的にデザインし、企業のアイデンティティと目標に沿うように形成することなのです。

では、なぜ企業にとってカルチャーデザインが重要なのでしょうか。

まず、強い企業文化を持つことは、帰属意識と目的意識を生み出し、従業員を惹きつけ、維持することができます。また、既成概念にとらわれない発想を促すことで、創造性や革新性を育むこともできます。さらに企業の価値観を提示したり、従業員や顧客に対するコミットメントを示したりできるので、企業の評判やブランドイメージを向上させることができます。

そして何よりも重要なポイントは、「企業と人材のマッチング度合いを飛躍的に向上させる」ということです。企業文化によって、企業のアイデンティティと目標が示されることで、ミスマッチングを減らし、採用効率と離職率の低下を促すことが可能になるのです。

ミスマッチングが減る → 採用効率が上がり、人事の負担が減る → 不必要に求人広告や人材紹介に依存しなくなる → 離職率が減る → 育成コストが適正化される → 企業全体の利益率が向上する

といったような形で、強力なサイクルを生み出すことが可能になるのです。

ただ、言葉にするのは簡単で…実際には多くの困難が待ち受けています。
企業にとってのカルチャーデザインを深く理解するには、それを形成する主要な構成要素を検討する必要があります。

文化は物理的な環境だけでなく、組織内で共有された信念や価値観からコミュニケーションや行動まで、あらゆるものを含んでいます。カルチャーデザインとは、これらの構成要素を意図的に形成し、特定の成果を達成するためのプロセスであると言えます。

企業文化は、従業員や顧客に対する接し方だけでなく、ビジネスの進め方も形成するので、企業の目標、価値観、ビジョンはすべてその企業文化から生まれ、アイデンティティや目標はこれらの要素を反映したものとなるのです。

企業文化には、階層文化、クラン文化、市場文化、アドホクラシー文化など、いくつかの種類がありますが、いずれにしても「どれが正しい、優れている」といったようなことはなく、どのような企業文化を作っていきたいか、企業としてどのようになっていきたいかを思い描くことが最初の一歩です。従業員と共に「こうありたい」という願いを形成していく必要がありますので、初めから「完璧な姿」を求めてはいけません。いつしかそれが企業全体の「緩やかな法」として機能し、少しづつ企業文化が形成されていくでしょう。

優れた企業文化の例

企業文化についての概要を知っていただいたところで、優れた企業文化を持つ企業の例をいくつかご紹介したいと思います。

Apple(アップル) 

革新的な企業文化で知られるアップルは、社員が既成概念にとらわれない発想をするような環境を作り上げてきました。同社は、ハイテク業界に革命を起こすような画期的な製品を世に送り出すことで有名です。その企業文化は、顧客体験を最重要視するという考えに基づいて構築されており、社員はこの情熱を共有することが期待されています。アップルの成功は、その創造性と革新性の文化に由来しています。 

Zappos(ザッポス)

ザッポスは、顧客と従業員の幸せを第一に考えるユニークな企業文化を育み、顧客サービスのチャンピオンとして愛されています。従業員の福利厚生に加え、卓越したカスタマーサービスを提供することに焦点を当てた強力なブランドを有しています。 「Create Fun and A Little Weirdness(ちょっと変でもいいから楽しいことをしよう)」は、コアバリューの1つです。この文化によって、同社は忠実な顧客ベースを維持することができ、2009年にはアマゾンに10億ドル以上で買収されました。

Netflix(ネットフリックス) 

ネットフリックスは、強力な企業文化がいかにビジネスの成果につながるかを示す典型的な例です。同社は、判断力、無私の心、勇気、コミュニケーション、インクルージョン、誠実、情熱、イノベーション、好奇心を大切にしています(Netflixのカルチャー)。従業員中心の文化は、自律性、誠実さ、コラボレーションを奨励します。実際、同社の有名な「Netflix Culture Deck」は広く共有され、模範とすべきモデルとして他の企業にも引用されています。

Patagonia(パタゴニア) 

パタゴニアの企業文化は、環境の保護と保全を中心に構築されています。パタゴニアはワークライフバランスを推進し、アウトドア活動のために休暇を取ることを奨励し、さらに社内に託児所を設けています。パタゴニアの価値観は、倫理的な調達、公正な労働慣行、環境の持続可能性など、ビジネスの意思決定を後押ししています。その結果、顧客ロイヤルティを高め、社会的責任を果たす企業としての評判を得ることができました。

 

これらの企業に共通しているのは、時間をかけて、競合他社とは一線を画す独自の企業文化を育んできたことです。従業員は自然体で共通の価値観を守ることに専念していると言えます。企業文化のデザインに注力することで、これらの企業は幸せな従業員と事業の利益という報酬を得ることができました。

いくつかの例をご紹介しましたが、一方でカルチャーデザインは画一的なアプローチではありません。唯一無二で確固たる企業文化を創造するために、意図的かつ個別的な取り組みを「継続させる」ことが必要不可欠です。これらの企業も、現在の素晴らしい企業文化を「継続させ続けられるのか」はこれから先に問われていきます。

次回は、カルチャーデザインを実践するうえでの重要な要素を紹介します。

カルチャーデザイン、してますか? 【#002:導入のステップ】

カルチャーデザイン、してますか? 【#003:注意するポイントと成功度の測り方】