色を通じてブランドを考察してみたー第1章〈視覚〉

色を通じてブランドを考察してみたー第1章〈視覚〉

こんにちは!FRACTA Research & Implementation(RI)局の島田です。

前回の記事「色を通じてブランドを考察してみたー序章」から、ブランドに印象付けられた色と「五感」の関係について考察を始めました。

それではさっそく、第1章となる今回は核心とも言える「視覚」について考えていきます。「視覚」は五感による知覚の割合のうちのおよそ83.0%を占める(産業教育機器システム便覧p.4 教育機器編集委員会編日科技連出版社:1972年ことから、五感の要となる感覚とも言えます。

あなたの目には、どう映る?

目で取り込んだ情報から感じ取れるのは、色そのものの明るさ、鮮やかさなどがあります。私たちは当たり前のように、ものを目で見て、その色を理解して、どんな印象かを考えています。そして、序章でお伝えしたように、目から取り込んだ情報は、個人の様々な思い出や記憶など別の情報と紐付けられています。

一般的な色の視覚効果を念頭におきながら、FRACTAが伴走したブランド事例を見て、さっそく分析していきましょう。

ジュエリーに清らかな輝きを

HASUNA

HASUNAは、素材となる金属や宝石の採掘に関わる人々や、素材を生み出す自然に配慮したエシカルなジュエリーブランドです。

FRACTAでは、「HASUNA」の既存4サイトを1つに統合し、ブランド統一を実現するブランドDX支援を行いました。
実績紹介ページ▶︎4サイトを1つに統合。ブランド統一を実現するブランドDX

ジュエリーといえば、 一般的にはゴールドやシルバー、ストーンの色が主に目に飛び込んでくる色の情報です。HASUNAの場合、TOPページのベースは白でも少しグレイトーンを帯びた色味なので、例えば、下に示した画像では少しグレイがかった白に、ゴールドのリングとその陰影がくっきりと写り、コントラストが高く色彩のメリハリが感じられる効果があると分析します。また色彩のメリハリを感じつつも、グレイトーンが全体的にやわらかな印象を与えてくれるようです。

https://hasuna.com/

About HASUNAからは、“自分を取り巻くものや身につけるものが今日の私を形づくる”、というメッセージが感じられます。色彩のメリハリは、身につける人へ“美しさ”や“特別感”を心理的に象徴づけるような印象を与えますが、キリッとした白ではなく、やわらかさを持つグレイがかった白を背景色に採用したことにより、“美しさ”や“特別感”が日々の営みに自然と溶け込みやすくなる印象となっています。このことから、TOPページの背景色は、ジュエリーを身につける人がブランドコンセプトを自然と体感できる効果を与えていると考えます。

また、「白」という色は真っ新、ピュア、といったイメージを持たせる効果があります。「輝くジュエリーをつけた新しい自分に出会う」「新しい気分になれる」そんな効果もあるのでは、と思いました。

サイト内のABOUTページに記されたこのメッセージに通ずる印象をぶれなく与えていると感じます。

“私は、これまで自分自身が選び抜いてきた、美しいものでできている。” 

なお、「白」についてはアートディレクター/デザイナーの西澤さんが執筆された記事もありますので、こちらもぜひご覧ください。

白の日によせて

洗練された目眩く眼鏡の世界へようこそ

金子眼鏡

眼鏡産地・福井県鯖江市の「金子眼鏡」は、自社の職人の手で丹念に作られたアイウェアのブランドです。

FRACTAがブランド強化・リブランディング支援を行いました。
実績紹介ページ▶︎哲学や姿勢、目指す未来であり、あるべき姿のビジュアライズ

1つ前の「HASUNA」とは対照的な、真っ黒な画面がディスプレイ一面に広がります。そこに佇むメガネ。背景もメガネも同じ黒色ですが、メガネのリムやパーツの艶感、レンズの光沢がその存在を際立たせています。

同色でも表現される質感の違いで、目線がメガネにぐっと引き込まれるようです。ミステリアスな空間と、そこに浮かぶ眼鏡に、吸い込まれていくような感覚を覚えます。

「黒」という色については、このような考察がされています。 

「ブラックホール」や「闇(ブラック)の部分(暗がり)」は、ブラックに秘密めいたオーラを与える。どちらも、もっとも暗い秘密さえ覆い隠すマスクのような、計り知れない謎の空間だ。

配色デザイン カラーパレットp.257 サラ・カルダス(著) 百合田香織(翻)ビー・エヌ・エヌ2021年

メガネのリムのカラーや形は様々で、それぞれのデザインが個性を持っていますが、ブランドサイトに訪れた人が目の当たりにするランディングページがこのようにシックであることにより、高級感×ミステリアスさやメガネの奥深さを印象付けますね。 

https://www.kaneko-optical.co.jp/

傘が与えてくれる彩

前原光榮商店

皇室をはじめ著名な方々にも愛されている、昔ながらの製法を受け継いだ熟練の職人による日本の洋傘ブランドです。

実績紹介ページ▶︎店舗のような接客体験を実装したECサイトリニューアル

サイトメニューを表示している淡めのグレージュが、洗練された空気感を与えます。下の画像の女性がさす傘の朱色と、その背景の川か池かの対比…ダルトーンのグリーンが傘の色のビビッドさを際立たせています。

https://shop.maehara.co.jp/

ダルトーンは落ち着いた印象を与えます。目に飛び込んでくる大部分の色に加えて、スタイリングの話となり若干横道にそれますが、女性の白いブラウスとデニムと、傘の色とのトリコロールカラーが、全体に心地よい軽快さを与えるように考察します。

伝統ある洋傘ながら、普段の生活の一部として使っていいんだな、と感じさせてくれますね。

この軽快さを感じる背景には、きっと私の主観が含まれているのでは…と少し立ち止まって考えてみました。私の記憶の中に、フランスのアパレルブランドのビジュアルの印象が残っています。ポスター全体から感じられる軽快さや、実際に身に纏って普段使いしていて心地よかった、という記憶や印象から、フランス国旗の「青」「白」「赤」の3色がこちらのサイトの女性の傘と服の色使いと紐づいたものと分析しました。 

https://www.orcival.com/fr/5-mariniere-coton-moyen

見えることが前提ということに、気づいてしまった

私は目から情報を取り入れて、その情報をもとに様々な印象を抱くのですが、同時に、多くのブランドサイトも、紙媒体も、「目で見える」ことが前提になりがちという、ちょっとした違和感を感じました。視覚的に情報を取り入れることは普段から行っているごく自然な動きではありますが、もし、私が視覚を持たない場合、配色の絶妙なコントラストや、配置されたものとの関係は、どうやって感じ取るのだろうか?と考え始めてしまったのです。

そんな折に出会った本から紹介したい文があります。こちらは、『目の見えない白鳥さんとアートを見に行く』で、著者の川内有緒さんが全盲の白鳥健二さんとご友人とアートを見に行った際に、白鳥さんから発せられた言葉です。

見えないから感じることは、見えるから感じることと並列だと思っているんだよ。そこにどういう差があるんだってツッコミたくなる。

目の見えない白鳥さんとアートを見にいくp.56 川内有緒集英社インターナショナル2022年

白鳥さんは幼少期に視力を失ったものの、形や色などの“視覚の記憶”はお持ちで、ものと色の紐付きやイメージはあるようです。アートを見に行く時は、一緒に行く方が描写や色を口頭で説明することで、アートを「見て」います。

このシーンはアート鑑賞でしたが、白鳥さんからの言葉を目の当たりにした時に、すっと腹落ちした気がしました。視覚的に取り入れる情報が重要であることを認識した上で、視覚で見る、だけではなく、alt属性のように画像の代わりとなるテキストを介したり、伝え聞いた言葉で「見る」ことができるのか、と。

突然難しい感覚から始めてしまったようにも思いますが、残りの4つの感覚とブランドの関係を考える前に、じっくり向き合ってみたいテーマでもありました。残りの4つの感覚は、視覚から取り入れた情報を元に繋がっていきます。

次回は、色が与える「聴覚」情報とブランドの印象を紐解いていきます。