企業や製品のブランド構築を考える際に、ブランディング専門のコンサルタントやコンサルティング会社に相談することができます。
スピードだけでなく、豊富なノウハウや客観的視点を踏まえた効果的なブランディングをするためにも、自社の方針や戦略を理解してくれる価値観にあったコンサルティング会社を選ぶことが重要です。
そこで、本記事ではブランディングコンサルティング会社を選ぶ際に、どのようなポイントで判断すべきかを解説します。
ブランディングコンサルティングとは
ブランディングコンサルティングは、企業や個人のブランドの構築を支援し、ブランドに関わる課題解決を目指します。コンサルタントが具体的にどのようなことを行い、何を相談できるのか、ご紹介していきます。
ブランディングとは。マーケティングとの違いは
そもそもブランディングとは何をすることなのか。わかりやすく捉えるために、マーケティングと比較しながら概説します。ブランディングはマーケティングと類似するもの、あるいはその一部として考えられることもありますが、何が違うのでしょうか。
関連記事:ブランディングとマーケティングの違いとは?意外と知らない2つの関連性やそれぞれの意味
マーケティングは、商品やサービスを売るための最適化をする活動です。グロービス経営大学院の用語集では、「顧客満足を軸に『売れる仕組み』を考える活動」とありますが、定義は様々で時代の変遷とともに変化しています。
一方でブランディングは、顧客や消費者に対して、その企業やブランドの価値や魅力を伝え、繋がりを深めることを目指します。
マーケティングが消費者を分析して直接アプローチする活動であるのに対し、ブランディングは顧客となりうる人々からどう思われたいのか、どんなイメージを持たれたいのかを考え構築していく活動になります。ブランドは消費者の頭の中にあるイメージだと言われることからも、その違いが想像できるでしょうか。ブランディングで具体的に何をするのかは、後述する「ブランディングコンサルタントに相談できること」を参照してください。
実務においてはマーケティング担当者の業務にブランド戦略が含まれたり、ブランディング担当がマーケティング戦略を考えたりと、明確に区別されていない場合も多いでしょう。実際、ブランディングの効果を最大限に引き出すためには、マーケティングとの連携は欠かせません。ブランド戦略においては、ブランディングとマーケティングを両軸で進めるのが理想です。
参考:「新版 ブランディングの基本」安原智樹(日本実業出版社)
ブランディングコンサルタントはブランド構築の専門家
以上を踏まえると、ブランディングコンサルタントとはブランディング、つまりブランド構築に特化したスペシャリストと言えます。短期的な売上げやマーケティング施策に注目するのではなく、ブランドの存続を考えた長期的な視点を持っていることも特徴です。
ブランディングコンサルタントに相談できること
では、具体的にブランディングコンサルタントに何を相談したり依頼できるのでしょうか。例えば、以下があります。
- 市場調査・分析
- ブランド戦略(コンセプト策定、ペルソナ策定、ポジショニング、リブランディング)
- 言語化(ブランドネーミング、タグライン作成)
- 視覚化(ロゴ、ブランドアートディレクション、各種デザイン)
- マーケティングコミュニケーション戦略(タッチポイントマネジメント、コミュニケーション目標設定、ターゲティング、UXデザイン)
- マーケティングコミュニケーション実行(ECサイト構築、キャンペーンビジュアル制作、販促物制作、広告出稿・運用、SNS運用、コンテンツ制作、映像制作、店舗デザイン、イベント企画・設計・制作)
- 分析・評価(データ分析要件設計、KPI設定、予実管理、効果測定)
- ブランド運用・人材育成(採用支援、ブランド人材教育)
- チームビルディング(体系化、体制づくり、ブランド運用マニュアル)
上記は一部になりますが、プロのブランディングコンサルタントはマーケティングや経営手法などを踏まえ多角的な視点からブランド構築を考えます。そのため、このほかにもブランドに関わる事項について幅広く相談できる場合があります。また、その人(会社)によって個別に様々な経験と強みを持っていることが多いです。
ブランディングコンサルティング会社を利用するメリット
ブランディングは勿論、自社内だけで行うこともできます。しかし、限られた人員や時間で効率よく、さらに効果的なブランディングを行うためには、専門のコンサルタントやコンサルティング会社(以下、コンサル会社)に相談してサポートを依頼することも有効な選択肢です。ここではブランディングを、専門コンサル会社に相談して支援してもらいながら実施する利点を見ていきます。
《ブランディングコンサルティング会社を利用する3つのメリット》
- ブランディングのスピードが上がる
- 客観的な視点が得られる
- ノウハウと情報がある
スピードが上がる
まず、期限目標を定めてスピーディーにブランディングを進めることができます。コンサル会社は最も効率よく進める手順を知っています。プランナー、ディレクター、コピーライター、コンサルタント、デザイナーなど各ステップにおいて専門スタッフが最適な方法を考え進行し、全体のスケジュール予測や把握もしやすいです。
客観的な視点が得られる
さらに大事な点として、客観的な視点が得られることがあります。マーケティングとの違いで触れたように、ブランディングは顧客や消費者からどのようなイメージを持たれたいかを考え作り上げていくことになります。従って、社外やブランド外からの客観的な視点に基づく評価や意見を聞くことが重要です。
これは体外的なブランディングだけでなく、プロジェクト中の社内での対話やインナーブランディングにおいても、議論の進行や整理において社外の人間が入ることにより緊張感を保てたり、逆に社員同士では言いづらいことを第三者の立場で代弁してくれるなどのメリットがあります。
ノウハウと情報がある
最新のデータや手法、陥りやすいリスク、他社や過去事例を踏まえて、新規性の有無や効果的なツールを提案したり判断してもらうことができます。ブランディングの手法やトレンドも日々変化しているので、調査や分析で常に情報収集をしているプロの意見を聞けるのもメリットの1つです。
ブランディングコンサルティング会社の選び方
ブランディングはマーケティングやプロモーションをするうえでの土台にもなり、ブランド再構築(リブランディング)をする場合には労力と時間がかかります。ブランドの成長と持続のためには一定期間ごとのリブランディングは有効ですが、ブランディングの失敗による短期間でのやり直しはできるだけ避けたいところです。
従って、ブランディングを確実に成功させるためにも、パートナー選びは重要です。では多くのブランディングコンサル会社が存在するなかで、実際にどのように選んでいけばよいのでしょうか。
①ブランディングの目的別に考える
何をブランディングするのか。ブランディングにはその対象で分けると大きく4つの種類があります。どの分野のブランディングについて相談できるのか、強みがあるのかは、コンサル会社のサイトページで明示していることもありますし、過去の事例実績ページから知ることもできます。
製品・サービスブランディング
個別の製品やサービスのブランド構築を指します。一般的にブランディングの対象として思い浮かべやすいものかもしれません。他のブランドとの差別化を図り、顧客や消費者に優先的に商品やサービスを選んでもらうことを目指します。ブランド価値や世界観を明確にして伝え、共感を得てファンを作るための施策を考えて実行したり、販売のためのマーケティング戦略も含みます。
企業ブランディング(コーポレートブランディング)
企業そのもののブランド価値を向上させるための活動です。企業理念を定め、企業名やロゴ、タグラインの策定などをして、社内外のステークホルダーに企業価値を認識してもらうことで企業の存在意義や信頼性、独自性を得ることを目指します。企業ブランディングの一貫として、以下のインターナルブランディングと採用ブランディングが含まれることもあります。
インターナルブランディング
企業内(ブランド内)のメンバーに対し、その企業やブランドの価値や方針を伝え浸透させていく活動です。具体的には、自社や自社ブランドに対する理解促進のための社内広報や研修、イベントなどがあります。これに対して、顧客や消費者などへ体外的にブランドの価値や魅力を伝えることはエクスターナルブランディングと呼ばれます。
関連記事:インターナルブランディングとエクスターナルブランディング、境界線はどこにあるのか
採用ブランディング
自社の魅力や強みを求職者に伝えることで、ブランドイメージを高め、自社にマッチした人材を確保するための活動です。採用市場での競争力や採用効率、定着率の向上などを目指します。自社の理念やビジョン、働き方やカルチャーなどの情報を発信し、戦略的に自社ブランドを構築していきます。
②得意分野を知る
上記のようなブランディングの種類に加えて、より具体的な強みを持っているコンサル会社もあります。例えば、ECサイトや実店舗の体験設計が得意である。UXデザインや、ロゴ・販促ツールのクリエイティブに定評がある。公共機関や地方自治体の実績が豊富……。BtoBのサービスプロダクト、またはBtoCの小売ブランドが得意。スポーツ業界やアパレルなど特定の業種に強い会社もあれば、先述のようにマーケティングを組み合わせた事業戦略や経営視点からブランディングを考えることが得意な会社もあります。
事例・実績を見る
得意分野を知るために、コンサル会社のサイトを確認します。特に過去実績を紹介しているページには様々な情報が詰まっています。自社や自社ブランドと同業種の事例があるか、自社の課題と類似した課題解決をしたことがあるか。企業の規模はどれくらいのところが多いのか。どんな企業やブランドを支援してきたかを見ることで、傾向を掴むことができます。気になる会社があれば、一度実績紹介ページを見てみてください。
また、実績についてはWebサイトに掲載されていないものもあるので、どんな業種や製品の経験があるのか、自社と同種の過去事例があるのかを個別に問い合わせてみるのもよいでしょう。
③総合力があるかを知る
それぞれの得意分野がありつつ、すべてのプロセスを一気通貫で支援してもらうことが可能かも判断のポイントになります。ブランドの価値や世界観の定義から、ロゴやビジュアルのイメージを作成し、さらにWebサイトや各ツールに展開して表現する過程までを1社への依頼ですませたい場合は、総合力があるかどうかも確認します。
総合力、つまりトータルブランディングができる会社に支援してもらうメリットは、各コミュニケーション設計やクリエイティブにおいてブランドイメージが速やかに共有され、アウトプットにも統一感が表現できることです。また、最適なプランを選択することで、全体の費用も抑えられることがあります。
④価値観やコミュニケーションカルチャーを知る
ブランディングパートナー選びにおいて最も重要なポイントかもしれません。コンサル会社が業務において何を大事にしているかなどの価値観が自社と似ていることが望ましいです。なぜなら、ブランディングはブランドという消費者やユーザーに与えるイメージ、つまり実態のない世界観を考え具現化していくことになるので、互いの価値観や美意識が大きく異なっているとなかなか納得のいく方向に進まないことがあるからです。
さらに、働き方やコミュニケーションのスタイルがあっているかどうかもポイントとなります。何よりもスピードを優先するのか、それとも対話を密にすることを重視するのか。細かいところでは電話やリアルでの話し合いを好むのか、あるいはオンラインやチャットでも支障がないのかといったことも含まれます。
これらは簡単に言えば「仕事のしやすさ」に繋がります。ブランディングの過程は1回のやりとりで納品して完了というわけにはいかず、ヒアリングや意見交換によるフィードバックやコミュニケーションを重ねて進めていくため、チームとしてストレスなく接することができるかがプロジェクト成功のカギとなりえます。カルチャーやコミュニケーション面での相性の良さも判断する要素にいれてみてください。
ブランディングコンサルティングの費用
スケジュールと同様に、ブランディングをするうえでの前提条件として無視できないのが予算でしょう。コンサル会社に依頼する場合は、月額ベースの料金体系の会社も多くあります。具体的な費用はどのように考えればよいでしょうか。
料金は相談内容により大幅に変わる
ブランディングにおいてはワークショップやインタビュー、調査を実施する場合や、ロゴマークデザインやWebサイトなどの成果物の制作までを含む場合など、必要なステップや施策は多岐にわたるため、相談する内容や項目数によってコンサルティング料も変動します。例えば、FRACTAではスタッフの人数と稼働時間から費用を算出し、期間ベースで契約しています。ブランディングに必要な要素を必要な分だけ提供できるようにしています。
各社の比較をするためには可能な限り同条件での見積もりを依頼をすることが重要ですが、コンサル会社によってはパッケージプランを用意している場合もあります。その場合はパッケージに含まれる項目を見て、自社が依頼したい内容を多くカバーしているプランやコースに注目します。
また、実際のコンサルティングでは、費用だけではなく、課題が解決されたか否か、スピード、コミュニケーションの円滑さ、成果物のクオリティなどが満足度に関わってくることも念頭に置くようにします。これらの満足度により、費用感に対する印象も変わるからです。
見積もりで概算を把握する
以上のように、コンサルティングでは相談する内容や項目の数、期間、成果物の種類などによって料金が変動するため、サイトの情報からだけでは具体的な料金を知ることができない場合がほとんどです。サイトには掲載していないプランやキャンペーンが存在することもあります。まずは見積もりの相談と依頼をしてみましょう。この過程のやりとりで、コンサル会社のスピード感やコミュニケーションスタイルなど自社との相性を図ることができるメリットもあります。
ブランディングコンサルティングの成功事例
ここでは実際にブランディングコンサル会社が支援した製品ブランディングと企業ブランディングの事例をご紹介します。
製品ブランディングの事例
新製法の緑茶ブランド「ALL GREEN」は、飲料メーカーの社内ベンチャー制度で事業化しました。ブランド新規立ち上げに際して、ブランドの仮説・検証からテストマーケティング、コミュニケーション設計、ECサイトの構築ディレクション、運営に向けたサービスの選定、制作物のアートディレクションに至るまでをブランディングパートナーとしてFRACTAが支援しています。ブランド設計では消費者目線での製品のフィードバック、ブランドネームの調整など、それぞれのプロセスでチームの一員となってコンサルティングと実装をしました。本販売前のクラウドファンディングによる応援購入プロジェクトでは目標額の500%を達成しています。
事例詳細:ALL GREEN | 株式会社ゼロワンブースター:社内ベンチャー制度から生まれた、緑茶ブランド立ち上げ支援
企業ブランディングの事例
アパレルサーキュラーエコノミーの実現を目指して設立された「ADOORLINK(アドアーリンク)」のコーポレートビジョン策定と、その思想を体現するコーポレートサイト構築の支援事例です。サステナビリティを取り入れたアパレルブランド事業とアップサイクル事業を手がける同社のブランド戦略策定では、ヒアリングとディスカッションを重ね、タグラインの制作をしています。企業価値の根幹にかかわるビジョン策定段階からコミュニケーションすることで、サイトのクリエイティブに一貫した表現ができるのも、一気通貫で依頼できるブランディングコンサル会社を利用するメリットです。
事例詳細:ADOORLINK | 株式会社ADOORLINK:目指す世界の実現に向けてドアをつなぐ。コーポレートブランディング
以上、ブランディングにあたってブランディングコンサル会社に相談してサポートしてもらうメリットと、会社選びのポイントについて解説してきました。予算や時間、目的を含め、自社のブランディングに適したコンサル会社を検討して見つけてください。
FRACTAはブランドの立ち上げから強化、DX、体制構築まで企業の成長に寄り添い伴走するトータルブランディングパートナーです。お気軽にご相談ください。