つぐもりの循環ができるまで(第1章)

つぐもりの循環ができるまで(第1章)

こんにちは、CSV局のナルトンです。
FRACTAがブランディング支援を行い、2023年7月にカフェ&宿泊施設をオープンした「つぐもり」プロジェクトのキックオフからローンチまでを全5回に分けてお届けする本シリーズ。

前回の記事はこちら▶︎「つぐもりの循環ができるまで(序章)

序章では、つぐもりプロジェクトがどのような経緯を辿ってスタートしたのか、そしてFRACTAへ依頼をしようと思ったきっかけを会長の土屋順子氏・社長の香南子氏の視点でお伝えしました。
第1章となる本記事では、キックオフからブランドコンセプト・ロゴの決定までのプロセスを、FRACTAプロジェクトメンバーの視点から振り返ります。

01.市場調査〜現地訪問

—A.Y.Judieの順子さんから「つぐもり」プロジェクトのお話を頂いてから、最初に実施したことを教えてください。

FRACTA プランナー眞喜志(以下、眞喜志 ):まずは基本的な市場調査を開始しました。軽井沢エリアの居住者の動向や、宿泊業や飲食業に視点を絞って、チェーン店よりも小規模経営の店舗を中心に、どんなビジネスモデルがあるのか、運営する上で何が大事なのか、というところですね。

キックオフ後には軽井沢での現地訪問も行いました。まずは順子さんと香南子さんにヒアリングの場を設けていただき、これまでの経緯をお聞きしたり、現地を実際に歩いてみたり…計画中のカフェメニューの紹介もしてもらいました。同じ目線で、同じ景色を見ながらお話できたことは、その後のプロジェクト進行にとっても大きな意味があったのではないかと思います。

FRACTA アートディレクター 横井(以下、横井):写真では見ていたのですが、実際に目にした時のスケール感や景色は全く想像できなかったものでした。「ここからこんな景色が見えて、こんな風に感じた」ということを体感的に味わえたのはすごく良かったなと思うところでした。あとは軽井沢の周辺施設を見てまわって、周辺エリアの時間の流れのようなものも感じ取れましたね。

02.ブランドの方向性〜ペルソナ確定

—プロジェクト全体の流れを教えてください。

眞喜志:元々カフェと宿泊施設を作りたいという構想はお伺いしていて、カフェで販売したいメニューや、宿泊自体が一組限定といったところもすでに決まっていました。そこからスタートしたので、全体としては①ブランディング支援、②トンマナ・ロゴの作成、③サイトプランニング、④実装の流れで進めていきました。

ブランディングフェーズでは、カフェと宿泊それぞれの業態を整理して、大事にするポイントを洗い出しました。現地でヒアリングした内容も含めて、例えば「県外から来る人たちもいるので、そういった層に興味を持ってもらうサイトを作りつつ、『地域密着型』という点は継続していくことがポイントになりそう」といった簡単な要件整理を行いました。

それから想定顧客について、軽井沢エリアの居住者に関してペルソナやCJMを土屋さんに検討いただき、FRACTA側では観光客として訪れる層を想定して、双方のアイディアを突き合わせた上でディスカッションをして、訴求ポイントのすり合わせをしました。

—進行していく中で、特にこういった点に気をつけたというポイントを教えてください。

眞喜志:プロジェクトを進めていく中で、順子さんから「つぐもりは、癒しだけじゃなくて、自然と自分の内面と向き合い気付きが得られる場所」というビジョンを共有いただいていたので、それをどのように言語化・視覚化して顧客に届けることができるか、そしてビジネスとして成立させていけるかを念頭に置いて進めていったところですね。

軽井沢エリアには宿泊施設が多いのと、世間的には複合施設がトレンドになっていることもあり、いかに差別化できるか、という点もポイントだったと思います。

具体的には、現地に行って感じた空気感、そこの見晴らしの良さをしっかり反映していきたかったのと、商品自体の付加価値ですね。個人経営のカフェなので、安価で大量に、ではなく、商品自体に付加価値や魅力を高めた上で「つぐもりにいく」ということが価値になり気づきになる、という場を目指した時に、商品自体も地産地消を意識した方が良いのではないか、という方針で進めていきました。

あとは宿泊が一組限定なので、ある程度の高級感を保ちつつ、カジュアルに楽しんでもらえる”中間”というイメージが世界観として出るよう意識しました。宿でゆったりとした贅沢な時間を過ごすこともできるし、食事の用意など自分たちで手を動かして工夫すべきこともあって、それらは「楽しさ」や「新しい気づき」になる。そんな視点で旅行好きの層をターゲットに、その後のデザインのトンマナ・バランスを意識しました。

03.トンマナ・ロゴ決定

—ロゴデザインのポイントを教えてください。

横井:「八ヶ岳の景色」や「変化」「循環」など、順子さんが大事にされているものがとても明確だったんですね。なので、つぐもりの原点とも言える「八ヶ岳の景色を残したい、そしてこの景色をもっと色んな人に知ってほしい」そういった順子さんの想いをロゴに落とし込みました。

「変化と循環を象徴する空」「不動の象徴である山」「対等の象徴であるつぐもり」という3つの要素を持ちながら、特に空を象徴的に使用することで「変化と循環」というつぐもりのテーマを表現しています。つぐもりに訪れる人が、あるがままの自分を認めて、明日に向かって変化していってほしい、そんな想いをロゴに落とし込んでいます。実は、この案以外にも何パターンか案を出していたのですが、割とすぐに「これが良いね」となりました。順子さんの芯に持っていらっしゃるものが、特に明確に表現されているのがこの案だったことが大きな理由だと思います。

また、ビジュアルは「景色」と「人との関わり」に焦点を当てて撮影をしています。訪れてみたくなる街の中の豊かな自然を美しいトーンで表現し、訪れる人・働く人誰もが対等に存在する場所であることを、さまざまな人に焦点を当てることで表現しました。

まとめ

「つぐもり」という場、そしてブランドとしてどうあるべきなのかを模索したフェーズ前半でしたが、全ては「八ヶ岳の景色」から始まり、その景色をたくさんの人々に見てほしい、そしてこの土地のパワーを感じてほしいという順子さんの想いがプロジェクトの軸となりました。

FRACTAとしては初の事例となる場所のブランディング。現地訪問により土地、景色、空気感そして何より代表の順子さんの魅力を肌で感じられたことがプロジェクトに大きな影響をもたらしました。

FRACTAでは日頃からクライアントの商品やサービスを体験することを大切にしてきましたが、その習慣が最大限に活かされた瞬間でもありました。

次章では、プロジェクトの後半となるサイト構築・実装についてお伝えします。

第2章▶︎つぐもりの循環ができるまで(第2章)