イルローザをつくる人とまち(後編)

イルローザをつくる人とまち(後編)

こんにちは。FRACTA ビジネスプロデュース局の熊谷です。

イルローザをつくる人とまち(前編)では、

  • 株式会社イルローザ様(以降、イルローザ社)とのプロジェクト発足の経緯
  • 現地訪問1日目 徳島県神山町の様子
  • FRACTAのブランド理解で大切にしていること

についてお伝えしてきました。

イルローザ社の皆さんは徳島県と共に成長してきたという想いを強く持たれており、県民からも徳島県にはなくてはならない存在として慕われています。
そのため1日目では、徳島県という土地への理解を深めた上で今回のプロジェクトに関わらせていただきたいと思い、FRACTAメンバーは徳島県神山町を訪問。神山町を直接案内していただく中で、町の取り組みについてもたくさんの気付きを得ることができました。

現地訪問2日目は、イルローザ社の創業者である岡田昌夫さん・俊子さん夫妻へのインタビューや、生産者さんとの対話、本社工房や店舗への訪問を通じて、イルローザ社の歴史やお菓子について理解を深めました。

その中でも、今回は創業者お二人へのインタビューを通して、「イルローザ」というブランドについてお伝えしていきたいと思います。

FRACTAプランナーの鈴木・原田、ディレクターの左納がインタビュアーを務めました。

イルローザの創業経緯

—まず、イルローザさんのことを知るところから始めていけたらと思います。創業のきっかけについてお聞かせください。

岡田(昌)氏:私が25-6歳の頃、昌栄(しょうえい)という会社でレストラン事業を始めました。
立地があまり良くない場所ですがたまたま自社物件があって、「じゃあ自分たちでやろうか」ということで。
カフェレストランのような業態でモーニングからディナーまでやっていました。
最初は暇でどうしようもなかったんですけれど、色々な努力とか工夫をして、お陰様で繁盛店と言われるようにはなったんですね。

それでも満足いかなくなって、ついに町のケーキ屋さんとしてオープンすることにしたんです。最初はいまで言うパティシエのような職人さんが一人もいない状態でしたが、物件探しからデザインまで自分たちで進めていきました。

そこからジェラテリアも兼任するようになり、最初は本当に苦労しましたけれど、中高生のジェラートブームに火がついたことで、2年ほどでかなり忙しくなってきました。でも、なかなか利益にはつながりませんでした。ケーキもそうですが、その日につくって売れなければ廃棄になってしまうことが多いんです。つくる量が増えても、利益も同じように増えるとはいきませんでした。

そこでギフト需要を喚起しようと洋菓子ギフトを作ってみましたが、こちらもあまりうまくいきませんでした。田舎というのもあるかもしれませんが、ギフトはお土産かお供え物の比率が非常に高く、ちょっとした手土産に洋菓子を持っていくという文化は根付きにくい状態だったんです。

だから今度は和を取り入れて、鳴門金時という地元の食材を使った和洋菓子を発売しました。それを改良したものが今のポテレットです。これが功を奏して、ギフトでの購入も増えていきました。

画像左:ポテレット/画像右:マンマローザ

しばらくはそのポテレットが主力商品だったのですが、途中から特にお客様の支持も高かったマンマローザに主力商品を変更しました。最初は自社の店舗だけで販売していたのですが、徐々に販売数が増えてきたのでショッピングセンターや外商、その後ECサイトでの販売も始めていきました。

お菓子はオリジナルを生み出すことが難しく、それを定着させるのはさらに困難です。だから我々のお菓子がこの地域のお客様に支持していただけたことは、本当にラッキーだったと思っています。

レストラン→洋菓子への変遷

—ありがとうございます。レストランからスタートし、これでは満足できなかったというお話がありましたが、レストランそして洋菓子を通して、満足できる場所として目指してきたのはどのようなことだったんでしょうか?

岡田(昌)氏:目指していたというわけではないのですが、レストランを経営して醍醐味だなと感じたのは、独特の臨場感といいますか、盛り上がる雰囲気です。お陰様でお店は繁盛して、お客様それぞれが好みのものを召し上がって会話を楽しむ。そういう雰囲気にやりがいを感じていました。

けれどお店は席が埋まってしまったらそれ以上の売り上げはつくれませんよね。たとえクリスマスディナーなどちょっと高単価のお食事でも、限度があるんです。やはり会社の経営者としては会社を守ることが第一ですので、レストランを続けていくためにもテイクアウトで購入いただける洋菓子の販売に踏み切りました。


イルローザが大切にしてきたこと

—ブランドを運営していく中で、イルローザさんとして大切にされてきたことは、どのようなところでしょうか?

岡田(昌)氏:美味しくなければ菓子じゃない。我々は一番そこを大切にしようということで、こだわってやってきました。

例えば我々が国産いちごを使い始めたのは、平成7年ぐらいなんですよ。その頃って夏場に国産のいちごなんてほとんどありませんでした。北海道の一部と徳島の三好という高地で作り始めたばかりだったんですが、我々も国産と言って踏み切ってしまったので、最初は夏場にいちごが無くて本当に苦労しました。それでも、現在まで国産のいちごを使うことにこだわりを持っています。

あとは、添加物をほとんど使っていないので、技術的な部分では苦労しました。
起泡剤を入れると柔らかくもなるし食感も良くなるのですが、それを入れないで勝負するということは、やっぱり技術力がいるわけですね。お菓子を作っていく中でも、常に注意して気を張っていなければいけないし、時間も温度も守らなければいけない。

そういうところで、自社の商品に対しても、なかなか満足できなかったり、喜んでもまた新しい課題が出てきたり...。数十年間そういうことの繰り返しでした。

県外へと徐々に積み上げた信頼

—色々ご苦労も多かったと思うのですが、今までやってきた中でこれは楽しかった、お客さんのこんな反応があってすごく良かった、などのエピソードはありますか?

岡田(俊)氏:お客様が美味しいな、買って良かったな、また買おうと思ってくださるようなことが手応えとして感じられた時は嬉しいなと思いますね。

昔はお店のことを知って頂くために新聞など昔ながらの広告媒体で発信していました。ジェラートのこともご存知ない方が多かったので、毎月10日はジェラートの日としてメンバーズデーを作って、その日はたくさんお客様に来て頂けるようにということも意識しながら発信していったんですよね。

店舗展開をする時も、イルローザを知って頂くために南の方にお店を出し、西に出し、はたまた県外にも出しとチャレンジしてきました。県外の方はイルローザをご存知無かったのですが、召し上がって頂いたら美味しいというお声をいただき、我々のお菓子はこだわりを持って作っているということをすごく分かって頂いて...。

お店に足を運んでくださったお客様に我々がお菓子をおすすめして、言葉でお伝えしながら徳島県内から県外へと徐々に信頼を積み上げていけたことは良かったですね。

全国へ発信していく中での課題

岡田(俊)氏:全国へ展開していく中で、生産者である我々が直接店頭に立っていてもお客様に手に取って頂けない場面もあり、発信方法がまだまだ不十分なこともあったと思うんですよね。

最近では、週3日ほどの営業で農家さんからもらった材料からお菓子をつくる小さな店舗がお客様の注目を集めていますが、そうしたお店は発信がとても上手だなと感じています。

お店を増やせば増やすほどそういったお客様に向けた発信が希薄になってきて、こんなにこだわっているのに伝わらないというジレンマがあって。お店に足を運んでくださるお客様だけに伝えるというのは限りがあるので、そこをもっと素敵に発信できればと思います。

徳島で店舗を増やしてきた理由

—先程のお話にあった、徳島の中でどんどん店舗を増やしていこうと思われたことについて、経営者としてどのような想いがあったのでしょうか?やはりご自身の中でも葛藤はありましたか?

岡田(昌)氏:まずは会社を存続させないといけない、社員の待遇も改善していかないといけないという中で、できる最高のものを目指してやってきました。そこは、店舗を増やしていきたいことと、自分の中でもものすごく矛盾しているとも思います。オーナーシェフや、一店舗主義だと一番こだわってできますよね。でも自分は拡大路線を取ったので、とにかく会社を元気に残さなければいけないと思っていました。

岡田(俊)氏:採用の時も親御さんに理解してもらえるような企業に成長させたい。それを原動力に頑張ってこれたというのはあると思います。

岡田(昌)氏:足掻いてやっているうちに、「イルローザ=地域の誰もが知っている」そんな会社になりましたけれど、最初はゼロからのスタートでしたから。

岡田(俊)氏:知名度が上がって一人歩きじゃないんですけれども、実情と違うところでイルローザを知って頂いているという苦しみみたいなものもあります。やっぱりブランディングをもう1回やり直さないと、という時期に来ていると思い、FRACTAさんに依頼したわけです。今のスタッフも色々頑張ってくれている中での、新しい発信みたいなものもしていきたいですね。

—ありがとうございます。お話をお伺いしていて、全てのことにすごく真摯に向き合ってこられたんだなと感じました。お客さんも従業員の皆さんもその親御さんのことも、すごく考えられていらっしゃるんですね。

岡田(昌)氏:特に昔は繁忙期はものすごく忙しかったのですが、それでも長年ずっと会社にいてくれている人もいて。マンマローザにしてもポテレットにしても、そういう社員との出会いが無ければ生まれていなかったお菓子もありますし、生まれてもまた全然違うものになっていたと思います。色々なご縁ですよね、本当に。

イルローザが選ばれ続けてきた理由

—長い歴史の中でイルローザさんの存在は徳島の中で大きいと思うのですが、ご自身が考えるお客様から選ばれ続けている理由とはどのような部分だと思いますか?

岡田(昌)氏:選ばれ続けているわけではないんですよ。有名な菓子店で修行してきましたとか、そういう方達がこの地域でもどんどんお店を出してきている。オーナーシェフ型のお店で、一店舗しか無いというところに価値を感じる方も増えてきているわけです。
そんな中でも多店舗展開する我々が選ばれてきたところでいうと、やっぱり安定の美味しさだったり、間違いが無いというところだったり、そういうところだと思うんですよ。

我々のこだわりは、ちょっとしたフォルムが可愛らしいとか、普通だったらおまんじゅう型だけど、そこもちょっとこだわって他社とは違うようにしてきたとか。同じ菓子でも特にマンマローザは本当に何十回もいろいろな改良を重ねてきているので、そういうことを続けて、安定していきました。

どんどん時代も変わっていきますので、その時代に合わせてなかなか対応できていないところもあります。徳島で一番の菓子企業だという自信はありますが、やっぱりこれを一歩超えなきゃいけないと思うんですよね。

これからも愛されるお菓子屋であるために

—「徳島で一番の菓子企業」を超えなければいけない、とお話しいただきましたが、超えるために必要だと思うものはありますか?

岡田(昌)氏:やっぱりブランディングだと思うんですよ。今までも色々取り組んでみて、自分たちで振り返ってみてもすごく良いなと思うものもあるんですけれど、イルローザとしての最初のお菓子作りのコンセプトから外商、ECサイトに至るまで、それが伝えきれていないというもどかしさを感じています。実際にそれができているお菓子屋さんもあるわけですから、努力し続ける価値はあると思います。

—最後に、イルローザさんとこれからプロジェクトを伴走する我々FRACTAに対して、特にここは大切にしてほしいということはありますか?

岡田(昌)氏:イルローザというブランドの根幹は、食だということ、お菓子という嗜好品であること、安心安全であること。そういう基本的なところを踏襲しながら、我々独自のスタイルでやっていくというところは外せないですね。

まとめ

後編では、イルローザ社の創業者である岡田夫妻より、イルローザが現在に至るまでの背景や、現状の課題感、今後の展望についてお話しいただきました。

レストランから始まり、業態を変えながら事業を拡大してきたイルローザ社。知名度も上がり事業が拡大したからこそ、ブランドとしての発信が薄れてしまっているのではないかと懸念し、インタビューではブランディングの必要性についても言及されていました。

時代が経っても変わらないもの。
会社が大きくなっても根幹にあるもの。

そのような、ブランドが最も大切にしてる価値観に繋がるヒントを今回得られたのではないでしょうか。

イルローザ社とのプロジェクトは現在も進行中です。現地訪問で直接ヒアリングを行い、実際に体感した気づきを生かしながら、ブランド価値の言語化やサイトリニューアルを行っていきますので、どうぞ楽しみにお待ちください。

FRACTAでは、引き続きブランドの支援をしています。

  • 新規ブランドの立ち上げや既存ブランドのリブランディングを検討しているが、具体的なステップが分からない
  • 自社でブランディングを進めているものの、このままでいいのか不安を感じ、客観的な視点が欲しい
  • ブランドの魅力を伝えるための言語化や発信、クリエイティブへの落とし込みに難しさを感じている
  • ブランド運営において、自社で自走できるようにしたいが方法が分からず悩んでいる…etc.

上記のようなお困りごとや、ブランディングに関するご相談がありましたら、ぜひお問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせくださいませ。

最後までお読みいただきありがとうございました。