アパレルサーキュラーエコノミーの実現を目指すADOORLINK 「ブランドビジョンの伝え方」

アパレルサーキュラーエコノミーの実現を目指すADOORLINK 「ブランドビジョンの伝え方」

こんにちは!CSV局のナルトンです。

FRACTAのプロフェッショナルによるブランディングのナレッジを専門分野に分けて発信する「選ばれるためのブランディング講座」。これまでに6回、ウェビナー形式で開催してきました。

過去に参加された皆様から「アウトプットまでの流れをより具体的に知りたい!」という声を多く頂いたことをきっかけに、今回は特別編と題して、ゲストに株式会社ADOORLINK 取締役 高橋 朗さんをお迎えし、FRACTAがご支援させていただいたADOORLINK様とのプロジェクトをFRACTAのプランナー狩野・小山内と共に振り返りながら「ブランドビジョンの伝え方」についてトークイベントを開催しました。

本記事では、2023年3月16日に行われたイベントの模様を対談形式でお届けします。

 

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僕らにとってのサスティナビリティってなんだろう?

まずはプロジェクトの背景や当時の課題をお話しいただけますでしょうか。

高橋氏:ADOORLINKを創業する5年前くらいから新規事業系のサービスを親会社のアダストリアでずっとやっていまして、いくつかサービスをローンチしていく中で、自然と社会課題解決型の事業が増えていきました。当時はイノベーションラボというチームにいたのですが、そこで社会課題に向き合っていく中で、事業としてそれを生業にしていく為にはどうしたら良いのかなと考えるようになっていましたね。

「サステナビリティ」という社会の流れや会社の姿勢もあったので、そこをお客様に届けて事業化することを目的に子会社化したという経緯があります。

基本的に子会社のメンバーはアダストリアから来ている人たちなので、サステナビリティに特化した事業子会社ではありながらも、「それぞれが考えるサステナビリティって何ですか?」といった共通理解が、実際集まってみると全員違いました。そこで、インナーブランディングも含めて、どうやったらみんなが同じ方向を見られるんだろうと、会社を立ち上げてちょうど1ヶ月後くらいに気付いたんですよね。それから、やっぱり一つの方針としてまとめる作業やアウトプットをしないと方向性がバラバラになって、そのまま走っちゃいそうだなと思えるきっかけがあって、FRACTAさんにご相談したという、そんな経緯でしたね。

狩野:ADOORLINKさんの中だけで進めても問題ないのではと感じられる部分もあると思うのですが、そんな中でも外部のパートナーに頼る必要性を感じられていたということなんでしょうか。

 


高橋:そうですね。子会社設立時に自分たちのMission・Vision・Valueを考える機会があったのですが、それがどうしても「内側からものを見ている人」の言語になっちゃうんです。事業者側が主語になっていて、我々は〇〇をします、みたいな宣言だったりするんですけれど。ただ、僕はずっと店舗からBtoCをやっているので、それってお客様から見た時に本当に納得できることなのかとか、外のステークホルダーが見た時に共感してもらえるのかっていうのがすごく不安だったんですよね。なのでやっぱり外部の客観的な目も入れて頂きながら、ちゃんとマーケットインした方が良いんじゃないかという思いもありお願いしました。

狩野:ありがとうございます。そういう意味では確かに、マーケットに上手く着地する為の視点としてパートナーの視点が必要だと感じられたということですね。

高橋:そうですね。あとそれを実際に色々なものに実装していく時に、ディレクションがいっぱいあるとすごく大変なので、コーポレートサイトなども含めてワンストップでお願いできるということも、すごく重要なポイントだったかなと思いますね。

 

同じ方向を見て、走り出すために

—プロジェクトのプロセスについて高橋さんからお聞きできればと思います。

高橋氏:前提として、ブランドの思想は内向きの言葉で、主語が「僕ら」としてありました。まずそこを対外的にステークホルダー側から見た時の言葉に置き換えるということをプロジェクトの最初にやっていて、色々検討を進めていきましたね。

その中でコーポレートのブランディングと、ブランド事業と言われるブランディングってちょっと違うなと、どちらかと言うとコーポレートの方はより普遍的な要素や本質的な何かを作らないとダメですよね、という話をADOORLINKのプロジェクトを担当していただいた小山内さんともしていました。特にサステナビリティとかサーキュラーエコノミーみたいな話をした時に、市場や顧客に対してあまり排他的にならないようにという意味も込めて、敢えてターゲットは決めず。そういうことをプロセスとしてご一緒させて頂いたというところですね。

「ADOORLINKってどんな会社ですか?」と社員が聞かれた時に、皆同じことが答えられないと結構大変なので、しっかりと言語化して、思想やコンセプトに落とし込む。これさえ読んでおけば大丈夫ですというフォーマットも含め、インナーブランディングとしてまず着手したという感じです。

狩野:ブランディングって自分たちのやってきたことを振り返って、まとめるために認識合わせをする、という意味で取り組むイメージを持つ方が多いと思っているのですが、高橋さんは初期段階でブランディングをしなければいけないと感じられていたということでしょうか。

高橋氏:そうですね。サステナブルと謳いながら、例えば従業員が滅茶苦茶働いていて夜も寝られていません、みたいなことが仮に起きてしまうと、その会社の企業価値自体が下がってしまうみたいなリスクがすごくあると思うんですよね。なので、透明性も含めて大きなテーマに向かっていく中で、我々が踏み外してはいけないことってあると思っていて、そこをまず最初に皆で共有しておかないとその後の働き方も含めて不整合が出るんじゃないかなと危惧していました。

事業の経済的なサステナビリティもそうですけれども、最初に向かう方向を決めるというのは、当たり前なんですけれどとても大事。そこがずれるとまずい方向に向かう可能性もあるなと思い最初に決めたという感じですね。

曖昧なものを具体化して見える化するということもそうですし、事業側としてはアダストリアと別の会社でやっているので、ステートメントに違いがないとADOORLINK自体の企業価値が出ないということも感じていました。その違いをちゃんと明確化する為に先にクリエイティブを作っておきたかったという思いもありましたね。

狩野:背景の引力が強いゆえに、ちゃんと自分たちが何者かを定めておかないといけないということですね。

高橋氏:そうですね。過去のセミナーでもありましたけれど、Reasonがアダストリアと違わないといけない。結果的に洋服を売るということでビジネスモデルは同じかもしれないんですけれど、そこで感じてもらっている価値というものが必ず違っていないと僕ら自体が外で存在している意味合いというのが薄くなるなと思っていて。その部分をすごく感じていましたね。

 

 

—FRACTA側として、振り返って印象的だったことや、今振り返ると難しかったところなどはありますか?

小山内:難しかったことは、先程お話しいただいた「”ADOORLINKさんならではのサステナビリティ”って何なんだろう」というのを前半にたくさん話し合いましたね。サステナビリティを面白いように言い換えたり、きれいに表現するというのは割と難しくないんですが、それが果たしてADOORLINKさんが掲げるべき内容なのかというところはかなりディスカッションしましたし、コンセプト文章に直接的に入っていないような、ADOORLINKさんのサステナビリティってこういうことなんじゃないですか?という裏テーマみたいなことも話したりして。その裏テーマみたいなものの解釈が合致してからは、コンセプトの表現がどんどん円滑になっていったことが記憶に残っていますね。

高橋氏:そうですね。ファッションをやっているので、社会課題と結びつけた時にあまりネガティブにならないようにしてほしいとか、やっぱり洋服を着てワクワクしてもらいたいので、それを如何に前向きに表現するかとか、最初はそういったところを含めたサステナビリティの定義についてお話しましたよね。

乗り越えた先を見据えていく 

そういったプロセスを経て、実際にコーポレートステートメントが決まるまでの流れを深掘りできればと思います。

高橋氏:「A DOOR」が1つのドアで、それがリンクして無限大に広がるサーキュラーエコノミーみたいなものを由来にコーポレートの名前を付けました。この「ADOORLINK」も静的な1つのワードなんですけれども、社員や関わる人たちがどういう行動を起こしてほしいのかというアクションの指針になるようなものとして、コピーも含めたステートメントの開発をしたいですというお願いをしました。

そこにより動的な要素を入れていくことで最終案になったのですが、「ドアの向こうにある何か」に向かって、我々もそうだしステークホルダーと一緒に広げていくんだよという行動指針の前段にあるような、そういうものを作りたいというお話をさせて頂いたので、結構アクティブな感じになっているのかなと今振り返ってみて思いますね。

生活者に伝わる印象として、自分ごと化して行動に移していくという指針としてこのステートメントを作ったという、そういう背景でしたね。

繰り返しになっちゃうんですけれど、社員たちの行動に直接影響を出せるというか、考え方や思想も含めた自分たちのアクション、コミュニケーションの仕方、そういったものに落ちていくということが大事だなと思っています。

 

 

—何案かご提案させていただきましたが、最終案になった決め手がありましたら教えてください。

高橋氏:一番大事にしていたのは、僕自身が腹落ちできるのか。そこはやっぱり当の本人として納得してこれは最高ですって言い切れるものじゃないといけないと思っていました。

”Beyond the door”と決めた理由も実はあって、当時2021年の年始で、コロナの影響もあって、これからどうなっていくんだろうと社内でも話していました。そんな中でアフターコロナという言葉を耳にしつつも、価値観も含めて「今まで通り何もなかったかの如く日常が取り戻せるのか」っていう疑問を社内皆持っていて。だからアフターコロナじゃなくて”Beyond”コロナで、コロナを乗り越えて、変化したマーケットで生きていけるようにこの1年2年準備しようみたいな話をずっとその当時していたんですよね。越えていくっていうのはすごくポジティブだし、当時の僕の心境ともすごく近くて。それを社内で話すと皆「そうですね」と理解してくれたので最終案に決まったという感じですね。

あと今思い出したんですけど、最初にこのプロジェクトをお願いした時にFRACTAの代表 河野さんに「高橋さん、最終的には必ず自走してくださいね」って言われたんですよ。それってパートナーさんとやる時にあまり言われたことがなかったので、すごくびっくりしたんですよね(笑)。ちゃんと自走できるようにサポートするので、後は高橋さんちゃんとやってくださいよというメッセージを受けて、なるほどと思って。結構青天の霹靂だったのを思い出しました。

企業の姿勢を映したビジュアライズ

今世の中に出ているWebサイト、これがある種ビジュアライズされ”Beyond the door”になったものだと思うんですけれども、こちらのクリエイティビティについてお聞きできればと思います。

高橋氏:Beyond the doorも含めてどんどん動いていかないといけない会社だなというのがあって、サイト自体のUXに動きを付けたいと思っていました。あとはBeyond the doorを軸にどういったクリエイションができるかという話をしていて、これ実際今背景が暗いんですけれど(※1)、昼になると明るくなったりするんですね。
※1:サイトのビジュアルに日照度合いをリアルタイムに反映。

ADOORLINKができてから今834日目、みたいなカウントも入れていて、そういった動的に常に進化しているというようなUXを大事にしたいなと思っていて、それをまずディレクションのテーマとしてやって頂けたら嬉しいなと思って実装してもらったという感じですね。

 

 

正直なところをお話すると我々も発展途上中なので、これから何をしますという話よりは、今までこういうことをやってきましたということを伝える方がお客様にとっても真摯なんじゃないかと思っていました。それが今まで積み重ねてきたアクションに紐解けるのかなと思っています。

やっぱり今までの商売って右肩上がりに成長し続けることが至上命題だったんですけれども、このADOORLINKという会社自体は規模の成長を求めないでくれとお願いしているんですね。規模を成長させるということになってくると、「いっぱい作っていっぱい売る」という話になってくるので、そこは我々のステートメントに沿って、「今日やったことが明日もできて、明日できたことが明後日もできる」という事業の再現性を如何に高めていくのかということが我々のサステナビリティだなと考えたんです。そこをビジュアライズ化する際にすごく気を付けていたというのもあり、サステナビリティって実は価値じゃなくて、企業の姿勢であり根本的な倫理観であって、それをお客様に伝えたとて、「ああそうですね、それは価値ではなくあなたたちの哲学ですよね」という話になるんだなというのが、このプロジェクトを通して最終的に気づいたポイントでしたね。

 

 

狩野:まさに今画面に出ていることもそうですが、特に印象的だったのは、「今日と同じ場所にまた戻ってくるという覚悟」という言葉も含めてやっぱりサステナビリティや、ある意味サーキュラー(巡る)というのがすごく重要なテーマだったんだなと改めて理解できました。

これらのプロセスを経て言語化をし、ビジュアル化する流れをお話して頂きましたが、総括すると、思想をしっかりと決めた上で議論をしきったからこそ、いくつかの候補案に対しても明確な舵取りができたのではないかなと感じています。

高橋氏:まさにその通りだと思います。今プロジェクトを振り返っても思い出して説明ができるってやっぱりすごいことだと思うんですよね。過去僕も色々なプロジェクトをやらせて頂いたんですけれども、何でこれに決まったのかというのを誰も説明できないみたいなことが結構あって、そこはやっぱりご一緒させて頂いたもののアプローチが全然違って、(事前に自走してくださいって言われているのもあり、)最初から自分ごと化して自分の脳みその中でロジックが組めるよう意識しながら走ったので、そこはすごく良かったなというのは思いますね。

小山内:チームの皆さんが真摯に全力で考えて、それらが積み上がったからこそ最後のアウトプットに繋がったんだろうなと思います。FRACTAだけが考えていても、”Beyond the door”がADOORLINKさんにとって強い言葉にはなっていなかったと思うんです。なので、お互いが考えてとことん議論し合った結果だとすごく感じます。


FRACTAはブランドの立ち上げから強化、DX、体制構築まで企業の成長に寄り添い伴走するトータルブランディングパートナーです。ブランドの挑戦をテクノロジー、クリエイティブ、ビジネスの力で支えます。

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