成功する人材配置 それぞれの担当者が担うべき役割とは #連載「今こそ考え、実現する!ECとブランディング」第3回

成功する人材配置 それぞれの担当者が担うべき役割とは #連載「今こそ考え、実現する!ECとブランディング」第3回

こんにちは。FRACTA代表 河野です。
本記事は、「今こそ考え、実現する!ECとブランディング」と題した連載記事です。第3回は「適切な人材と役割」をテーマにお伝えいたします。

第2回▶︎高利益体質を実現する ECのブランディング成功事例

個人の知識量よりチームとしての安定感

 ECをブランディングする。それは「顧客にとって最良の体験とは何か」を突き詰めることである、と前回お伝えしました。また、ECとブランディングがバランスよく実現できている事例も併せてご紹介しました。

 では、ブランディングを実行に移すにあたって、どのような体制とアクションが必要なのでしょうか。今回は、社内で「誰が何をすれば良いのか」を具体的にお話しします。

 大前提として「ブランディングもECもわかる」人材を探す必要はありません。もちろん、そういった人材がすでに社内にいる、もしくは入社予定である場合はその人を事業やプロジェクトの中心に据えるのがベストでしょう。しかし、「ECとブランディングのどちらにも理解が深い」人材は採用の難易度が非常に高いです。いざ事業を推進しようとしたとき、人材が揃わなければ何も進みませんし、いつ採用できるのか目処がたたない状態で待っていても仕方がありません。

そこで、今いる社内の人材をベースにおすすめのチーム構成をお伝えします。

  1. ECをよく理解した担当者とブランドをよく理解した担当者の2名体制を作る
  2. 1にブランドの顧客ペルソナにマッチする人材を担当者に加える(合計3名)
  3. これらの人員の上司を既存のベテラン社員から選出し、ECとブランディングのリスキリングを行う

 このチーム構成が最適である理由は「組織として安定運用が可能である」からです。さらに細かく分解すると次のようになります。

 

1.ブランディング担当者とEC担当者の2名体制を作る

 二人三脚で進めるべきECとブランディングですが、頻繁に方針がぶつかり合いズレが生じる可能性もあります。それぞれの視点を持って最適な落とし所を探ることのできる「チーム」作りが必須であり、そのために2名体制を敷きます。

 

2.顧客ペルソナにマッチする人材を加える

 ECとブランディングの成功には、徹底した顧客理解が欠かせません。そのため、顧客の心理状態にもっとも近い存在である「素」の感情が必要です。とくにSNSなどのコミュニケーションは、必ずペルソナに近い担当者に権限を渡しましょう。その人材を「1」に加えることで、盤石な3名体制が実現できます。

 

3.上司を既存のベテラン社員から選出する

 最後に上司の存在。他部署との関係や社内予算の調整、社内プレゼンなど、非常に重要なポジションです。ECとブランディングは、他部署との折衝や根回しが要となります。ここが機能しなければ、どんなに魅力的な戦略を発想できても実現は難しいでしょう。社内外からの信頼が厚い人、社歴が長い人、顔が広い人が適任です。そうした人であれば、現場の頑張りを適切に評価する知識なども持ち合わせているはずです。もちろん、就任してすぐの段階は知識や経験がなくても問題ありません。継続的なリスキリングでカバーしていきましょう。企業としては上司となる人材への教育投資を軽んじてはいけません。

 

正しいディレクションが社内外のパワーを最大化

 ウェブやEC、ブランディングの知識は最初からあるに越したことはありませんが、スキルを持った人材を探し求めると採用までに時間がかかります。ウェブ制作はプロに依頼したり、EC・ブランディング・マーケティングなどは外部の専門家に頼ったりすることもできます。しかし、自社のブランドは自社の人間がいちばん理解しています。自社のブランドを理解した人材が外部のパートナーや専門家に対してディレクションを行うことで、ノウハウも蓄積しながら外部のパワーも最大化させることが可能です。そのため、まず学ぶべきはディレクション技術といえます。

 ディレクションとは、簡単にいうと全体の指示や指揮および進行管理です。ここでは、目的を達成するための戦略と実行プランをたて、その実現に向けて社内外への交渉や指示を行うことです。

 ブランディング担当者は、顧客像や顧客が求める価値・体験を、SNSやアンケートなどのコミュニケーションを通じて定性的かつ定量的に計りながら、アクションプランをたてます。EC担当者は、ECサイトの企画・運用・CS・目標達成に向けての具体的な施策を計画、実行します。この2名は、売上の目標などしっかりと双方の認識を合わせておく必要があります。目標となる姿をすり合わせたうえで、それぞれのアプローチ方法を模索することになるからです。

 さらに、顧客のペルソナにもっとも近い担当者は、SNSやCS、広報・PRなどで積極的に顧客とコミュニケーションを行い、より顧客理解を深めていきます。自らの経験や思考も交えながら前者の2名にフィードバックすることで、リアリティを持った戦略設計が可能となります。

 3名をまとめる上司は、それぞれが適切な同じ目標に向かって進んでいるか、目標へのアクションとして最適な選択を行っているか、チームとしてちゃんと機能しているかを管理し、ときには適切に評価、アドバイスします。

 この仕組みが安定して機能すると、事業の目標へ少しずつ前進していきます。

 みなさんには早速、「ECとブランディングを成功させる体制作り」にチャレンジしてほしいです。とくに担当になったばかりの人に向けて、次回は少しアカデミックな内容も交えて「ブランディング」を解説します。

 第4回▶︎「らしさ」の象徴と信頼が利益を生み出す ビジネス視点で紐解くブランドとブランディング