文化商店裏話〜企画編〜

文化商店裏話〜企画編〜

こんにちは、CSV局のナルトンです。9月に開催した文化商店がどのように始まり、企画されていったのか?その裏側を構想から企画、ワークショップにクリエイティブと全4回でお届けするシリーズ「文化商店裏話」。

本記事では第二回目となる企画編として、文化商店のコンセプトやタイトル考案、体験設計・コピーに至るまで全体を通して企画を担当したPS局の土田とBCR局の小山内にインタビューした内容をお届けします。

▶︎第一回目:文化商店裏話〜構想編〜

—それでは、お二人の文化商店での役割について教えてください。

小山内:全体を通して企画に関わっていました。文化商店のネーミングやコンセプト、特設サイトを含むライティングや体験企画など、ブランドの目指す想いを言語化した問いのコピーライティングも担当しています。

土田:同じく文化商店の企画設計担当として、タイトルやコンセプトの部分、イベント企画など根幹から最後まで、小山内さんと一緒に担当していました。一部分を担うのではなく、体験設計プロセス全体の企画構想〜実装を行いました。

「変化し続けるブランド」を表現する場づくりを目指して

—ありがとうございます。では、早速ですが本題に移ろうと思います。文化商店の構想は、一年ほど前からスタートしていたそうですが、その当時は企画においてどのようなことを進めていたのか教えてください。

土田:仰る通り、構想段階では代表 河野の想いが発端となって昨年(2022年)からスタートしているんですよね。FRACTAらしさを体現するイベントができたら…と思いつつも、そもそも FRACTAらしさ”ってなんだっけ?というところから改めて考えて、それにふさわしいネーミング案を50案以上高速でとにかく出していきました。

小山内:当時は「ブランドって、変化し続けるものだよね」ということをみんなに伝える場にするのがいいのでは、と考えていました。ブランドって一見すると完成しているように見えて、裏側では進化し続けるためにもがいてるんです。その生々しさをできるだけ表現したいよね、ということを昨年の時点で考えていました。

土田:そこからCSV局を中心にイベント自体の目的やFRACTAとしての今後の方向性が固まっていき、それらに対してどんな要素が出せるかコンセプトを検討していった形です。開催のタイミングを検討していく中で、今年9月開催に向けていよいよ具体的に動き出そう、となったのが2月・3月くらいでした。

—その当時はまだ「文化商店」というタイトルも決まっていない段階だったと思いますが、コンセプトやネーミングが決定するまでの経緯をお聞かせください。

小山内:コンセプト策定時には、社内メンバーから、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方良しのイベントが良いよねと言う声を受けていたんです。

それで、KPIをどうするかメンバー内で考えた時に、どんな要素が必要かを検討したんですね。そこで売り手(=ブランド)にとって、本質的な認知拡大(=ただ知ってもらうだけではなく理解してもらうこと)が叶わないといけないよね、と言う話をしました。それを叶えるためには、ブランドと来場者の接着面をFRACTAらしく翻訳してあげることが必要なんじゃないか、と。

ネーミングについては「未来」がキーワードだったので、ブランドそれぞれが未来のために取り組んでいることが伝わる場を目指して、未来に辿りつくまでをフォーマット化しようと初稿では「PEOPLE PLAN」というタイトルを出しました。

—初稿の反応はどうでしたか?そこからどのように「文化商店」が生まれるのかお聞かせください。

土田:少し真面目になっちゃうかも、という意見がありましたよね。「地球や社会、人々にとって良いこと」が全面に出るのではなくて、単純に「お買い物って楽しいよね」とか、実際の売り買いの中での文脈で文化を語れる方がFRACTAらしいのではないか、という方向に定まっていきました。「説教臭くない・押し付けがましくしないイベントにするには、どうしたらいいだろう?」と、当時文化商店のプロジェクトメンバーでたくさん話をした気がしますね。

小山内:メンバーでたくさんアイディアを出し合ったので、ミーティングの場で結構進んでいったんですよね。その中でも「文化商店」というネーミングが生まれる大きなヒントとなったのが、ミーティング中に土田さんから送られてきたこのチャットです。

この文章を読んだ時に、「文化」って未来に繋がる良い言葉だなって改めて感じたんです。FRACTAのビジョン「ブランドを、未来の文化へ」を二年前に考えて書いた時も同じようなことを考えていたことを思い出しました。今回も「文化」というワードが良いのではないかと決心しました。

しかし、同時に「残したい文化を選ぶ」という言葉に強烈な違和感を覚えていました。文化は一部の誰かが取捨選択して残していくものではなく、コミュニティの大小を問わず、誰か一人にでも愛されたものが文化になっていくものだと思っていたからです。

あとはみんなが難しく考えすぎているかもしれない「文化」というものを、できるだけ気軽に、身近なものとして表現したいという思いもありました。これが正解の文化だ、というものもないですし、考えようと思えば何千時間も思考できる「文化」という存在は、同時に頭をからっぽにしても楽しめるから「文化」であるわけで。そうした経緯から「文化商店」を提案し、プロジェクトメンバーからも「これいいじゃん!」と、満場一致で採用されました。

コミュニケーションを醸成する体験設計

—名前が決まり、文化商店らしい企画を検討していったかと思いますが、これらがどのように生まれたかお聞かせください。

土田:一度、社内の文化商店チームメンバーでオフラインのワークショップを開催しました。元々私と小山内さんとでアイディア出しをしていたので、それらの企画アイディアをカスタマージャーニーマップ上に並べていって、実現性の可否やコンセプトに合っているかを皆でジャッジして絞っていきましたね。

選定ポイントとしては、各ステークホルダーのKPIを使って、満足度や回遊性が測れて、結果的に設定したゴールが達成できる体験にしないといけないよねという話と、ブランドと生活者を繋ぐ橋渡しをFRACTAが担う企画でなければいけないと考えていました。

—会場内やスタンプラリーでは、各ブランドごとにいくつかに色分けがされていました。これらはどういう意図があるのでしょうか。

小山内:衣食住遊のカテゴリーで色分けしています。これは文化商店のコンセプトを絡めていますね。いつかの未来、文化に成っていくブランドたち…ということでいきなり考えてもらうことってなかなか難しいので、今私たちが生きている日常の中、「衣・食・住・遊」の「延長線上」の未来であるという表現にしました。未来の文化に成り得るものは、パラレルワールドの存在なのではなくて、今日普通に暮らしている、本当、普段のちょっと先、という表現です。

あとは純粋に、今言ったことをひっくり返すのですが、「文化商店」と銘打ちながらも文化なんて考えなくても楽しめるイベント、空気感作りというのも同時に意識しました。

ガラポンって単純に楽しい&嬉しいし、ベルの音っていい会場のアクセントになるし、スタンプラリーのスタンプめっちゃ可愛いし、会場のBGMも出店ブランドさんにライブ的にDJとしてご担当いただきました。

コンセプトがわかって楽しいも、なんとなく楽しいも、深度の差はあれど愛してくれる人がいる限りどっちも「文化商店」の文化になっていくと考えたからです。

—イベント内企画の一つとしてスタンプ台に記されていた「問い」。この企画意図を教えてください。

小山内:「商店」らしい賑わいと、出店してくださっているブランドさんの理解を深めていただくために、ブランドと来場者の会話が発生することが必要だと考えました。なので「話し初めの第一歩、会話のスタートってなんだろうね」と考えて出てきたのが、問いかけでした。接客対応もあるなかで、出店ブランドさんの最初の一言、問いかけをイベントブース内に掲げて、自動化してあげた方がいいよねという考え方です。

土田:店員さんから直接話しかけられると、「ちょっと押しが強いな」と感じてしまうかもしれない部分を、「問い」として設置することで、あくまで話しかけるきっかけづくりとして機能してほしいという意図も含まれていますね。

—26ブランドそれぞれの問いについて、ライティングでこだわったポイントを教えてください。

小山内:問いを考える上では、内容の伝達スピードが大事になるだろうなと思いました。ブースに並んでいる商品や商品の説明を見て会話が生まれる、そこに至るまでのスタート地点を担わなくてはいけないと思っていたので、ブランドの中で一番キャッチーな箇所を探ってライティングをしました。

もう一つは、文化商店って楽しいところにはしたいのですが、ブランドが実現したい未来のことだけじゃなくて、今、直面している、私たちが目を背けてはいけない「課題」を表現しなくてはならないブランドさんもいらっしゃいました。楽しいトーンなんですけれど現実的な生々しい内容も問いかけとして書いた記憶があります。問いかけで「?」と思ってもらって、実際話してみて、ブランドさんのすごさ-いい意味でも、ブランドが解決しようとしている隠れた課題-悪い意味でも、事実を知った時の衝撃を記憶に残して帰ってもらいたいなと。お笑いでいうオチへの前フリのような役割ですね。

土田:誰かが他己紹介をしてくれるイメージかもしれないです。ブランド運営者は、自社ブランドへの愛があるからブランドのことは誰よりも語れると思うのですが、それをいきなり初対面の人に伝えても、「すごい熱意のある人だなあ」で終わってしまうなど、伝わりきらない部分があると思うんです。それが第三者から教えてもらうと、なぜかすっと入ってくるというか。そういう感覚でライティングをしました。

—ありがとうございました。最後に、文化商店を開催してみてどう感じましたか?

土田:私はプランナー兼コピーライターとして4年ほどクライアントワークを行ってきましたが、そうした仕事のときは自分の力量を評価されることも強いやりがいの一つでした。ところが今回、社内の人も含めブランドさんや参加してくれた人が喜んでいる光景を見て、「自分が評価されたい」とかどうでもいいなと思えたんです。

誰かを照らす人生というか、誰かを照らすという仕事もすごく良いなって。この企画、このコピーに注目してほしいということではなくて、関わる人がみんな幸せであればいい、まさに三方良しの体現だと思えたので、個人的にはプランナー、コピーライターとしての1つ転換期になるとても良い体験でした。

小山内:「文化商店」熱狂的なファンのかたも、とりあえず楽しいから「文化商店」の方も、暑いから&寒いから「文化商店」とりあえず入ろうの方も、みんなが楽しければそれでいいと思いました。あくまで「文化」という難解なものがテーマなので、変に、わかりやすいでしょ!これが文化よ!という嘘のコミュニケーションをする気はありません。文化商店は楽しい!ブランドのことを理解してくれる人が増える!という機能的&情緒的なラインを死守し続けることが、本イベントのいいあり方なのではないかなと感じました。

文化商店に来場してくださった方、出店してくださったブランドさん、そして企画したFRACTA全員も、文化の考え方って人それぞれだし、他人に迷惑をかけないかぎり否定されるものではないので、文化ってそういうもんだと思っているので。

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今回は企画編として、「文化商店」のコンセプト設計からタイトル、そして体験設計についてお伝えしました。

次回は、各方面からも話題となった文化商店のクリエイティブについてお届け予定です!
ぜひ続編もお読みいただけたら嬉しいです。