自分の言葉で魅力を伝え続ける-ヤプリ金子さんと語る、エバンジェリストが不可欠な理由

自分の言葉で魅力を伝え続ける-ヤプリ金子さんと語る、エバンジェリストが不可欠な理由

プロダクトやブランドを愛し、熱を持って自分の言葉で語ること。それができるエバンジェリストの存在が、BtoC、BtoB問わず不可欠になってきています。ヤプリの金子洋平さんは、まさにエバンジェリスト。伝え続け、信頼される秘訣を、FRACTA代表 河野が聞きました。(Text:ワダ スミエ)

ヤプリ金子さんが展示会に戻ってきた!

河野:7月からヤプリのリレーションシップ・マネジメント室に異動になったとFacebookの投稿で拝見しました。バックオフィスを統括する立場から、また展示会やイベント登壇をされるとのこと。改めて、金子さんのキャリアをざっくり振り返っていただいてもよろしいでしょうか。

金子:新卒でGMOインターネット(現・GMOインターネットグループ)に入社しました。高校生の時に初めてインターネットに接し、世界中の人たちとつながることができるのを「新しい産業革命だ」と感銘を受け、将来は絶対にインターネットビジネスにかかわりたいと思っていたんです。入社後は、本当に刺激的な日々を過ごすことができ、社会人の基礎を叩き込んでいただいたと感謝しています。

平日は会社員として働きながら、週末の空いた時間に自分でサーバーやドメインを手配し、HTMLを書いて「裏原.jp」というファッション系のメディアを立ち上げました。人気が出てきたため、GMOインターネットを退職して起業しました。メディアに加えて、メンズアパレルを中心にeコマースなども始め、11年間運営しました。ところが、在庫を抱えるビジネスはやはり難しく、またメディア運営も黎明期と比較すると成長が鈍化していました。会社のメンバーも家庭を持つなど将来を考えるタイミングになったことから解散し、僕ひとりでECコンサルタントなどで続けていました。35歳になったのを機に転職活動をして、ファストメディア(現・ヤプリ)に入社します。入社後はエバンジェリストとして、セミナー登壇で全国を飛び回り、現在に至ります。

 バックオフィスの責任者を経験して

河野:「裏原.jp」は憧れのサイトでした。アパレルブランドのECサイトを構築する際に参考にさせていただいたこともあります。

金子さんが入社後、ヤプリはぐんぐん成長し、2020年12月には東証マザーズに上場しています。金子さんもどんどん出世されましたが、2022年はピープル&カルチャー本部でバックオフィス部門の責任者をされたのは、今までにないキャリアかなと感じていました。

金子:実は、入社時からずっとマネジメントに苦手意識を持っていたんです。展示会や自社イベント「Yappli Summit 」などチームで取り組むことは多くありましたが、マネジメントよりもフロントに立ってコミュニケーションを取るほうが得意だと思っています。

そんな僕が、2022年度の1年間だけバックオフィスの責任者を引き受けたのは、上場もあり、バックオフィスのメンバーに大きな変化があったから。つながりを作ったり、より良い状態になるサポートを行ったり、自分なりに取り組みました。

河野:マネジメントに向いていないとおっしゃるけれど、まったくそんなことはないと思います。マネジメントというのは向き不向きでなく、本人がやりたいかやりたくないかのほうが大きいんじゃないかな。

金子:人にアドバイスするよりもアイデアを出してお客様とコミュニケーションを取る方が得意なんです。僕が仕事をしていていちばん喜びを感じるのは、お客様の気持ちが変わるところですね。ECでもBtoBマーケティングでも共通するところだと思うのですが、展示会でパンフレットを見たり、ウェブサイトで商品を見たり、営業のプレゼンを聞いたり、何かをきっかけに「良いな」と感じて、お客様の態度変容が起きる。その瞬間がいちばんおもしろく、仕事をする楽しみでもある。リレーションシップ・マネジメント室に異動したことですし、また展示会のブースに立ったり、セミナー登壇をしようと思っています。

河野:ヤプリさんは展示会の常連ですよね。

ヤプリにおける展示会の体験設計 

金子:コロナ禍は例外として、やはり展示会がいちばんご契約いただけるチャネルなんですよね。上場以前のそれほど予算が潤沢になかった頃でも、裏では涙を流しながら、見栄を張るつもりでブースを作っていた時もありました。投資をしたからには回収しなければなりませんから、展示会では皆必死です。

それでも強引なやり方はせず、誠実に名刺交換することを続けてきました。その時の体験が良くないと、名刺をいただけたとしても契約にはつながらないでしょう。どのスタッフが接客しても、良い名刺交換の体験をしていただけるよう努力しています。SaaS企業ですから、一度契約いただいたお客様が、8年、9年と継続してくださることもあり、本当にありがたいと思っています。長いお付き合いを続けられるよう、最初の出会いを大切にしたいんです。自分の名刺交換が、企業同士のお付き合いの始まりになるかもしれないわけですから。

河野:その考えは、非常に近いと感じます。FRACTAでも、狭いブースにPC1台だった頃から展示会への出展を継続しているのですが、名刺をいただくために強引なことはしないと心掛けてきました。 

顧客への感謝を示す場づくり

金子:僕のプレゼンテーションを聞いて、その後の名刺交換に来てくださって、そこから契約につながったこともあります。その経験があると、セミナー登壇も楽しみなんですよね。サービス導入企業と提供企業という関係ではあるのですが、お互いのビジネスがうまく行き続けることを願う仲間だとも思っています。

河野:コロナ禍でオンラインセミナーも活発になり、デジタル施策に偏重したところもありますが、リアルの展示会は大事ですよね。デジタルは、成果も見やすいし無駄がないのですが、目的に対して一直線で、副次的な効果がないと思うのです。たとえばデジタル上の広告を出稿したとして、それを見た社員のモチベーションアップにはそれほど寄与しないと感じています。一方で展示会に出展すると、お客様と直接お話しできる機会にもなるし、自社が何をやっている会社なのかを理解することもできるし、社員にとっても大きな経験になります。リアルは、副次的な効果がすごく広いんです。ヤプリさんのリアルイベント「Yappli Summit 」は、お客様への感謝を示すという意味合いもあるんじゃないでしょうか。

伝え続けるエバンジェリストは不可欠な存在

河野:本日、金子さんと特にお話したかったこととしては、マーケティングと人事がもはや一体ではないかというテーマです。展示会を例にあげましたが、対外的なマーケティング施策が人事に生きてくることもあるし、人事の取り組みがマーケティングに生きてくることもある。優れたブランディングができている会社は、そこがしっかりとつながっているのではないかと考えています。

金子:まさにそうですね。ブランディングを含めたマーケティングが、その会社で働きたい人を増やしますし、人事側がプロダクトを理解していないと本当に良い採用はできないんですよね。ヤプリでは、カスタマーサクセスの精神を持っているかを採用の際に最も重視しています。お客様の成功を願い、一緒に考えていけるかどうか。その意味でも、プロダクト、マーケティング、人事はすべてひとつにつながっているのだと思います。

 組織のあり方の変化

河野:組織のセオリーも変えなくてはいけない時が来ていますよね。コロナ禍が、環境を大きく変えましたが、実際のところは2010年代には変わり始めていたと思います。以前は組織に所属することはすなわち、組織にぶら下がることに近く、忠誠心のようなものが問われていた。それがコロナ禍を経て、組織に属するのが、ファンクラブに入るくらいのレベルに変わってきたと思うんです。良い待遇以外にも、その組織に属する理由が必要になった。たとえば、持続的な成長を実感できたり、価値あるものに貢献できているかどうかだったりします。

そうなると、社員とのコミュニケーション量を増やす必要がある。社員数が増えるほどにコミュニケーションの総量を増やす仕組みが求められます。リモートワークの是非が問われたりもしていますが、リアルはおそらく、話をしていなくてもその場に一緒にいるだけで、何かしらのコミュニケーションをしている。リモートワークではそれがないから、たとえば1on1の回数を増やすといった対策が必要になる。移動時間がなくなった分を、1on1のようなコミュニケーションにあてないと、相互理解が落ちてしまうと懸念しています。

金子:全員がプロフェッショナルで、ハイパフォーマンスを出している組織であれば、リモートワークか出社かの議論にもならないのではと思います。しかしながら、新入社員のような若手にも入ってきてもらいたいですし、そうなると入社してすぐに全員がハイパフォーマンスを出すのは不可能ですよね。人材育成の観点では、リモートワークだけでは限界があるというのは、ここ3年間のコロナ禍で学習してきました。GAFAでも出社に切り替えているとの報道もあり、リモートワークだけで人材育成を行っていくのは世界共通で難しいのでしょう。

河野:そもそも、会社や組織の運営の難易度がすごく上がっているのだと思います。マーケティングと人事がつながっているという話をしましたが、メンバーがそれぞれプロダクトやサービスを理解し、仕事を通じて体現することによって会社がブランディングされていくことを踏まえると、それを意識できているか否かが、会社としての強さを左右するようになっています。

会社のポリシーはそれぞれ違って良い。けれど、そのポリシーがない経営者にメンバーはついていくのが怖いのだと思います。「『ホワイトなのに若手が辞める』企業の残念な盲点」(東洋経済オンライン)が話題になりましたが、待遇などが恵まれていても、会社のポリシーがきちんと説明されていなければ、組織がまともに動かなくなってきている。「黙ってオレについてこい」では通用しなくなったわけです。

 自らの言葉で伝え続ける

金子:付け焼き刃で手法だけ取り入れても、取り繕うことができなくなっている。見た目の良い福利厚生よりも、これからどうなっていくのか、会社はどうしていくのかの説明が求められているのだと思います。

河野:戦術や戦略を展開するよりも先に時代が進んでしまうと、手法が一気に無効化されてしまうんですよね。オムニチャネルやOMOも、コロナ禍でお客様のほうが先行してしまい、あって当たり前になった。ただそこにポリシーがなければ、たとえOMO化されていても通用しない。本当にポリシーを「伝える」ことに尽きると思います。コミュニケーションが求められている。

それを金子さんからすごく感じるんです。金子さんは組織としてのコミュニケーションというより、組織に所属するいち個人として、伝え続けている。結果的に金子さんを信頼する人はたくさんいて、契約につながっているから、組織にも貢献している。信頼されることに個人か組織かはもはや関係ないんです。ならば、信頼されるためにどうしたら良いか。それは自分の言葉で語ることだと思っていて、金子さんは実際にそれをなさっている。

金子:自分の言葉で話すのは、すごく意識してやっていることです。お客様をはじめ自分が信頼している方たちとはずっとつながり続けたいから、絶対に押し売りもしたくないですし。

河野:伝えることが重要な時代において、金子さんのような人が所属してくれて、かつ、金子さんのような人が自由に動ける組織を目指すべきだと思っています。これは私見ですが、金子さんは会社からの自分への評価については、どうでも良いと思っているところがあるんじゃないかな。もっと広いところを見ている。求められなくなればいつ辞めても良いと思っているし、役に立てるところがあるならここで頑張るよ、みたいな。そのスタンスが、自分の言葉で語ることができることにつながってくると思います。

しかしながら、それがうまくできる人は少ないですよね。自分の言葉で語るのは、コントロールがすごく難しいですから。具体的にわかりやすい例をあげれば、炎上しないとか。ミュージシャン的なバランス感覚を感じます。

エバンジェリストとしての役割

金子:会社を代表して喋っているのは自負しているため、変なことはしないですね。会社にプラスになるかどうかはいつも意識していて、その範囲内で、自分の言葉で語るようにしています。

河野:いつでもそういうことを考えて行動できる人に、自由に行動してもらえるようにするのはすごく難しいことです。つい、会社の根幹を握ってもらおうとしちゃいますからね。すると、その人の本来のパワーが発揮されなくなってしまう。

金子:匙加減は難しいですよね。セールスでも、マーケティングでも、広報でもないポジションで、仕事をとってくる。それがエバンジェリストなんだと思います。さらには、自分がつながり続けたい方たちにおすすめするわけですから、プロダクトや会社のことを本当に好きでなければできない。なかなかいない役割だからこそ、他社からヘッドハント的なお声がけをいただくこともあるのですが、自分が心から愛せないサービスを自分の言葉で語り、おすすめすることは僕には難しいことなんです。 

河野:好きなアーティストやおもしろい映画を人にすすめる時のような熱を持って、プロダクトやブランドを語ることができるかどうかですよね。今日、金子さんとお話ししていて思ったのは、ブランディングだとかマーケティングだとかの前に、コミュニケーションがあるということです。そして、外向きの発信は社内も見ています。

金子:表裏一体で動いていますよね。外ではどれだけ良いことを言っていても、社員が愚痴を言っていたらだめでしょう。そういうのは結果的に、展示会のブースの雰囲気なんかにも出てしまうんだと思います。 

河野:BtoC、BtoB問わず、SNSですべて丸裸になっているところはありますよね。マーケティングと人事がつながっているというところに立ち戻っても、今後ますます、エバンジェリストの存在は不可欠だと思いました。金子さん、本日はありがとうございました!


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