猛暑がブランドに与える影響について考察してみた

猛暑がブランドに与える影響について考察してみた

こんにちは、Research&Implementation(RI)局の萩原です。
9月に入り、朝晩の涼しい風に秋の訪れを感じる今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか?

それにしても、今年の夏は暑かったですね…!
避暑地と呼ばれる場所へ旅行したり、暑さを逆手に取って海やプールなどの水辺で過ごしたり。一方でクーラーの効いた部屋から出ない!という方も多かったのではないでしょうか?

私自身が正にそうで、「暑いのに外出したくない派」と言いましょうか、家から徒歩5分程のスーパーへ買い物に行くことさえも躊躇してしまいました。
ついに買い物に行くことを断念した私は度々ネットスーパーの存在に助けられたのですが、そこでふと思ったわけです。

「このまま気温の上昇が続いたら、外に買い物に出る人が減って小売業の在り方が変わっていくのでは?」と。
気象庁が毎月発表している「日本の月平均気温」を見ても、年々気温が上昇していることがわかります。

そこで今回は、猛暑とされた今年の夏を振り返りながら、小売業、ひいてはブランドにどんな影響をもたらすのかについて考察していこうと思います。

 

猛暑日をどこで過ごすのか

日本経済新聞の記事によると、7月の「猛暑日」が過去最多を更新した(*1)とのことで、ニュースなどでも度々「災害級の暑さ」といった表現を目にしました。
また、熱中症で救急搬送される人も前年同時期を上回っており(*2)、これからは私たちの夏の過ごし方そのものが問われることとなりそうです。

これについては様々な意見があるかと思いますが、私のように「クーラーが効いた家から出たくない!」というタイプと、「暑い日こそ涼しい場所に出かけよう!」というタイプ、大きくはこの2つに分かれるのではないでしょうか。

どちらが正解ということはありませんが、気温の上昇にともなって二極化していくことは容易に想像できます。

ここで一つの例としてドバイをご紹介させていただきます。
砂漠気候で、夏季は平均して40℃台前半まで気温が上昇するドバイ。日本の猛暑などまだまだ序の口にすら思えますね…。

そんな夏季は上昇する気温とは対照的に、ホテルやアトラクションの利用料金が下がる時期でもあるそうです。(*3)
また、ドバイ・パークス&リゾーツ(Dubai Parks and Resorts)や、グリーン・プラネット(The Green Planet)などの屋内アクティビティも充実しています。

極め付けは、世界最大のショッピングモールでもあるドバイ・モール(Dubai Mall)の存在。1,200軒を超える小売店をはじめ何百軒もの飲食店が軒を連ね、その広さはサッカー場200個分に相当。ショッピングはもちろん、水族館やスケートリンクも併設されており、エンターテインメントやレジャーまで楽しむことができるため、1日中このモールで過ごすという人も多いそうです。

現に日本でも、商業施設内に屋内型の砂場が作られる(*4)などの動きがあり、砂場目当てに商業施設を訪れ、買い物をしていくというシャワー効果も見込めると話題です。
今後はさらに屋内アクティビティや、レジャー要素を兼ね備えた大規模ショッピングモールが増えていくかもしれませんね。

*1)日本経済新聞2023年7月26日https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE2620Y0W3A720C2000000/
*2)日本経済新聞2023年8月18日https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE1618S0W3A810C2000000/
*3)ビジット・ドバイ(ドバイ経済・観光局)
https://www.visitdubai.com/ja/plan-your-trip/weather-in-dubai
*4)日本経済新聞2023年8月18日https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC163TB0W3A610C2000000/

 

問われるブランドの在り方とは

近い将来、1日中ショッピングモールで過ごす人が増えると仮定しましょう。その時、小売店はどうあるべきでしょうか?
もちろん今まで通り商品を販売するという根本は変わらないと思いますが、果たしてそれだけで良いのでしょうか?

eコマースが発達した昨今、私がこの夏ネットスーパーを多用したように家にいながらあらゆる買い物ができるようになってきています。
もちろん、試着したり、実際に手で触れ体感することは実店舗でなければ実現できませんが、それに加えさらなる体験が求められるようになるのではないでしょうか。

この「体験」をどのように実店舗へ実装するのかが、今後の小売店ひいてはブランドの明暗を分けるポイントといっても過言ではなさそうです。
体験というと、オンライン・オフライン間でのシームレスな体験というのがよく挙げられます。もちろん重要なことではありますが、それ以上に、実店舗での集客にはオフラインでなければならない確固たる理由、つまりわざわざそこへ行く理由というのが必要です。

そういう意味でも、先述した商業施設内の屋内型砂場などは、良い例ですよね。
夏休みに家で遊ぶのに飽きてしまったお子さんを何とかして遊ばせたいが、この暑さで屋外の公園に行くなどもっての外、という心理にうまく作用しているように思います。
さらに買い物もできるとなれば、正に一石二鳥。「わざわざそこへ行く意味」が複数生まれるというわけです。

店舗を構えるブランドについても同様に、わざわざ足を運びたいと思ってもらえるかどうかが重要な指標となりそうです。

 

特別な体験とは何か

購入した商品やサービスから得られるものとは一体なんでしょうか。
商品そのものを物理的に得られるのはもちろんですが、私たちは無意識下でそれらを通じて自分自身を表現したり、自分らしいライフスタイルを実現したいと思っているのではないでしょうか。そして、こういったニーズに応えてくれる体験こそ、顧客にとって特別な体験となるのです。

私がこの夏何度もお世話になったネットスーパーですが、やはり生鮮食品をオンラインで購入するのにはやや抵抗がありました。これは、実際に目で見て鮮度を確認したいという意識が働いたからだと思います。
例えば、野菜をピックアップしてくれるスタッフさんの顔が見えたり、野菜の選び方に精通している(調べてみたところ、野菜スペシャリストという資格もあるそうです…!)といった情報があればその抵抗感は軽減できるのかもしれません。
これは業種に限ったことではなく、実際に商品そのものを見ることができない状態では、判断をサポートしてくれるということ自体が特別になります。

では、実店舗ではどうでしょうか? 私たちはある程度のことであれば自身の知識や経験を基に判断をすることができます。その状況で求めるのは、私たちの知り得ない専門的な知識や客観的なアドバイス、商品の使い方などの提案であり、それらをしてもらったことに対し少なからず特別感を抱くのではないでしょうか。

もしかすると、今後求められるのはわざわざ足を運んででも体験したい「ちょっと特別な接客」なのかもしれません。
また、それに加え、店頭でストレスなく過ごせるかどうかというのもより重要なポイントになっていきそうです。

今回は暑くて家から出たくない、eコマースばかり利用している私の視点で考察をしてきました。
少し涼しくなってきたので、実際に店舗にも足を運び、これからの小売、そしてブランドの在り方についてさらに考えていきたいと思います。