Z世代の特徴から紐解く消費行動 ー消費でも“らしさ”を表現したい?!

Z世代の特徴から紐解く消費行動 ー消費でも“らしさ”を表現したい?!

こんにちは。FRACTA Research & Implementation(RI)局の月森です。
私は想いやストーリーを持ったブランドがとても好きで、暮らしに取り入れたいと思っています。でも思い返してみると、昔からずっとそうであったわけではない気もします。ここ数年で、想いやストーリーを持ったブランドが以前よりも増えている風潮を肌で感じていました。それらに触れるうちに、自分の志向も変わっていったのかもしれません。

先日、Z世代でブランドを立ち上げられている方とお話しする機会がありました。その中で、もしかしたら私が感じていた『風向きの変化』は主にZ世代を中心に起きているのではないか、と思ったのです。

そこで今回は、その『風向きの変化』が何に起因するのか探るべく、Z世代の特徴と、そこから考えられる消費行動について紐解いてみようと思います。

そもそもZ世代とは

明確な定義はないものの、1990年代後半から2010年ごろまでに生まれた世代で、2023年現在では10代前後〜20代前半を指します。もともとアメリカで1960〜70年代に生まれた方をX世代、80年代〜90年代に生まれた方をY世代(ミレニアル世代)と呼んでおり、それに続く世代として「Z世代」と名付けられました。

Z世代の特徴

まずはZ世代の特徴とその背景について、整理してみたいと思います。

1. デジタルネイティブ

SNSを使いこなし、世界中の膨大な情報の中から自分に必要なものをキャッチする力に長けています。

内閣府「令和3年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、子どもがインターネットを利用していると答えた保護者が、中学生では97.6%、高校生では99.3%とあります。
ひとつ前のY世代(ミレニアル世代)もデジタルに強いと言われますが、1995年の「Windows 95」の発売、1990年末期〜2000年にかけたITバブル、2000年のiPhone発売などを考えると、物心ついた時にすでにインターネットが身近な存在であったZ世代の方が、よりデジタルに慣れ親しんでると言えるでしょう。

2. 多様性を受け入れ、自分らしさも大切にする

多様性を受け入れ、他者の個性を尊重しつつ、自分らしさも大切にする傾向があると言われています。上記のように、幼い頃からインターネットを通じて日常的に様々な価値観に触れていたことから、多様性を当たり前のこととして受け入れられるのかもしれません。情報を得るだけでなく、自分の考えを発信することも自然にできる世代と言えます。

また、電通デジタル「デジタルネイティブ世代の消費・価値観調査 ’21」によると、Z世代の45.7%が「好きな商品やサービスを通して、誰かと繋がることがある」、55.0%が「自分がどのような商品・サービスを利用しているかは、自分らしさを表現する上で重要だと思う」と回答しています。消費を通して、自己表現をしている側面もあるのかもしれません。

「SNS普及前は、たとえば学校のクラスの中、部活動の仲間内など、オフラインの環境下で多くの人に消費されていないものを『好きだ』と主張してもリアクションがもらえず、知名度の低いものを堂々と消費するハードルが高かったのです」(ニッセイ基礎研究所 廣瀬涼氏)

ところが、SNS上では自分の身の回りで消費されていないニッチな趣味でも“同志”が見つけられる。(中略)こうして、「皆と同じものを消費する」時代から、「唯一無二のものを消費する」時代へ、移り変わっていったのだ。

DIAMOND online「Z世代は「コト消費」より「ヒト消費」?若者の行動が大変化した理由」より)

ふむふむ、確かに、ミレニアル世代である私自身は学生時代、「周りの友達があまり好きそうではない」ものの話を堂々とはできなかったかも…と思い出しました。自分の好きを堂々と表現できることは、少し羨ましいです。

3. SDGsや環境問題、社会貢献への関心が高い

日経MJが2021年に16~26歳約5000人に実施したアンケートによると、「価格が高くなったり、不自由になったりしても、自らの消費行動を通じて社会の課題解決に貢献したいか」という問いに対して34.9%が「貢献したい」と答えており、「貢献しなくていい」と答えた23.2%を上回っています。3人に1人が貢献したいと思っているということは、割合的には少なくない印象を受けます。

これも、やはりデジタルネイティブであることが影響していると思います。世界中の社会問題や環境問題に関する情報もリアルタイムで得ているため、身近に感じているのかもしれません。

加えて、学校教育の変化も関係があるかもしれません。小学校は2020年度、中学校は2021年度、高校は2022年度から実施された新学習指導要領に「持続可能な社会の創り手の育成」が明記されました。学校でSDGsに関して学ぶようになり、高い倫理観が養われていると言えます。

博報堂「生活者のサステナブル購買行動調査2022」によると、SDGs(持続可能な開発目標)について、「内容を知っている(良く知っている+ある程度知っている)」を合わせた認知率は、10代(16~19歳)が突出して高く74.3%となっている(全体52.2%)とあり、SDGs教育が浸透していることがうかがえます。

私は以前教育機関に勤務していたのですが、サステナブルな考え方をものづくりや芸術表現に活かすことを学んだり、学部を横断した交流授業があったりと、SDGsに関する教育が行われていることを実感していました。未来を担う世代の方たちが、積極的にこういったことに関心を持ってくれていることは頼もしく思うとともに、もっと自分たちも関心をもち、行動しなければなと考えさせられます…。

4. 購入前の入念なリサーチ

消費行動における特徴としては、「買い物に失敗したくない」ということが挙げられます。購入前の徹底的なリサーチに余念がなく、衝動買いをしない傾向にあるそうです。確かに、冒頭で触れたZ世代の方との話の中でも、「自分に合ったものを知っているから、それを探して買うようにしている」とお話されていたのが印象的でした。これも前述のSNSの普及が影響していると考えられます。情報やものが溢れている時代だからこそ、選別が必要になっているのでしょう。

SHIBUYA109 lab.が実施した「Z世代のSNSによる消費行動に関する意識調査」では、「あなたは新しいブランドや商品をどこで知りますか」という問いに対して、「Instagram(51.0%)」「Twitter(48.5%)」「動画配信サービス(45.0%)」という結果となっており、お店、雑誌などを大きく上回っています。

さらに、「あなたはSNSや動画配信サービスで情報収集する際、何を参考にしますか。」という問いに対しては、インフルエンサーの投稿が33.5%と最も参考にされているとのこと。身近に感じられる「実際の利用者の声」を参考にしていることが分かります。

5. 経済面では保守的な傾向も?

一方、経済的には保守的であるという見方もあります。Z世代は生まれてからずっと不況の日本を見てきたため、金銭感覚や職業観がより現実的だそうです。また、直近ではコロナ禍や物価上昇の影響もありそうです。

大和総研コンサルティングレポート「コロナ禍における消費行動の変化 購買チャネルの変化から見る消費行動の変化」では、

新型コロナウイルスの感染拡大は、外出制限等の様々な行動の制約を通じて、消費行動に大きな影響を与えている。また、家計収入の頭打ちや消費支出の減少に繋がっている。特に30歳代までの若い世代への影響が大きい。

と、あります。

また、消費者が購入する財やサービスの価格を集計した経済統計である消費者物価指数は、変動の大きい生産食品を除く総合で、2022年10月に前年同月対比3.6%上昇と1982年2月以来40年ぶりの上昇幅である一方(※1)、この物価上昇に賃金の伸びは追いついておらず、2022年の物価の影響を考慮した実質賃金は前年比0.9%減と2年ぶりにマイナスになった、ということもあります(※2)。
このような経済情勢も、慎重に買い物をすることにつながっているのかもしれませんね。

時代の変化に敏感でいたい

ここまで調べてみて、Z世代は「膨大な情報の中から必要な情報を掴み取ることが得意」で、「価値観の多様性を受け入れるとともに自分らしさも表現したい」と思っており、さらに「社会貢献を重視」していることがわかりました。こういった特徴が消費行動にも現れているのだと推測します。

Z世代が消費者になる時代の変化とともにブランドはこの風向きを捉えており、それが冒頭の「想いやストーリーを感じられるブランドが増えている気がする」ことの答えなのかもしれません。この仮説を確かめるべく、今後も調査を続けていきたいと思います。

「ブランドを、未来の文化へ。」

これは、FRACTAが掲げているビジョンです。
私自身も、ブランドの伴走者であるFRACTAの一員として、今後も時代の変化を敏感に察知し、愛されるブランドとはどんなものなのかを考え続けたいと思っています。

それが、さらなる未来のブランドの担い手に伴走すること、そして受け取り手の生活を彩ることにつながると信じているから。

調査がまとまり次第、また記事にしたいと思います!

[引用・参考記事]
※1:日本生命  3分でわかる 新社会人のための経済学コラム 「第154回 日本の物価は35年前と比べて約2割上昇したが、世界に比べると…」
※2:日本経済新聞2023年2月7日「22年の実質賃金0.9%減 給与2.1%増、物価高下回る」