同社が構想されていたサービス・ターゲット像を踏まえた課題を考え、ブランドとしての大きな方向性を定めるところからスタートしました。「誰にどのような価値を届けるか」、プロジェクトメンバー全員への個別ヒアリングを実施。そこから見えてきたメンバーそれぞれの理想と現実、どちらを否定することなく丁寧に向き合い、提供するサービス内容に見合う納得感のあるコミュニケーションとは何かを綿密に議論しました。そして、ブランドのロードマップを作成し、将来的なコミュニケーションイメージまで想定しながらビジョンに向かってどう成長していくべきかを全員で目線合わせをしていきました。
日々の食卓を簡単に、少し贅沢にするプレミアムな冷凍グルメというところから、「 新しい “食” や“おいしさ” への冒険。 そして出会いや発見という体験を 日々の食卓に添えるという価値があるのではないか」と仮説をたてました。 バイヤーをサービスの根幹として定義し、バイヤーにおまかせだからこそ感じられるちょっと贅沢で、おいしい出会いを提案するという意味を込めて「“おまかせ”で、おいしい出会いを。」といったコンセプトを策定。新しい食やおいしさの出会いを創出する「セレンディピティ」とブランドの持つ可能性の広がりを言語化しました。
おいしさ、出会いといったベネフィットにフォーカスしたものや、手軽な贅沢といったプロダクト特性に寄ったもの、バイヤーの価値を言語化したものまで幅広く検討しました。バイヤー厳選のリッチなグルメがお任せで届く体験から、お任せの「楽(ラク)」さとグルメの「リッチ」さをとって造語にした「ラクリッチ」がネーミングとして決定しました。 またサービスが顧客に提供する価値を定義するタグラインも合わせて開発。顧客が一目見てネーミングが意味することと、便益となる価値をストレートに表現しながら、冷凍グルメを扱うサービスであることが理解できるように「ラクでリッチな、おまかせ冷凍グルメ便」というサービスタグラインに決定しました。
「バイヤー」「プチ贅沢」「ワクワク感」を主なキーワードとし、コンセプトをビジュアライズ化していきました。非日常的な食ではなく、あくまで日々の食卓に彩を添える存在として親しみやすい存在でありたいという想いから、気軽だけれども贅沢感を味わえる「EASY PREMIUM」という考え方をデザインコンセプトとして策定しました。 ロゴデザインの開発では、プレミアム感を加味したものや食のサービスであることを連想させるマークの開発まで幅広く検証。バイヤーという人の魅力で打ち出していくという想いや、ユニーク性も加味し、バイヤーをキャラクターとしてアイコン化し信頼感を醸成させるデザインに決定しました。 バイヤーは貫禄を感じさせつつ、程よくデフォルメされたデザインで柔らかい雰囲気に仕上げています。ミニマムなデザインのカタカナロゴタイプと組み合わさることで、親しみやすくキャッチーな印象を与えます。
プロジェクトの開始に伴い、FRACTAのプロジェクトメンバー内で既に市場に展開されているあらゆる冷凍グルメのサブスクリプションサービスを体験し、共有し合うレポート会を実施。 注文から体験に至るまでにどのようなベネフィットや不便さがあるか、俯瞰したユーザー視点で徹底的に洗い出し、食べるまでの時間も楽しめるコンテンツの必要性を深く理解しました。 カスタマージャーニーマップのなかで最も期待感を高めるべきは開封体験であると定義し、箱や同梱物にバイヤーを介したコミュニケーションを入れるなど、体験から得た学びをコミュニケーション設計に反映させていきました。
ラクリッチはメニューの半分がシークレットになっている「おまかせ定期便」といったサブスクリプションサービス。サービスの特性上、サイトを訪れた人に老舗百貨店「大丸・松坂屋」を代表する食通のバイヤーが厳選した商品がおまかせで届くといった「安心感」と「期待感」、両方を醸成させるサイトコンテンツが重要でした。 何が届くかわからないといった不安を払拭させるため、過去のセレクトされた商品を一覧でみられるページを作成。商品を一覧にするだけでなくジャンルやコースで絞り込みができることによって食べたいジャンルの商品の取り扱いをすぐに見ることができ、更にバイヤー視点で一つ一つの商品説明やポイントを入れることでワクワク感を高める設計にしました。 また、「よくある質問」や「ご利用ガイド」に加え、ラクリッチの楽しみ方をバイヤーより案内する「教えて!バイヤーさん」など、サイト上でラクリッチがどんなサービスかがわかる情報を漏れなく網羅しつつ、バイヤーという「人」を通してサービスを知れる、安心感と温かみのあるコンテンツを目指しました。
クリエイティブ開発にあたって大丸松坂屋百貨店らしい考え方やコミュニケーションは何かを突き詰めることが重要でした。バイヤーという人の魅力や親しみやすさにフォーカスし、ロゴ、ビジュアル、キャラクター、アイコン、サイト、開封体験それぞれの役割を定義しながら、「ラクリッチ」というネーミングが持ち合わせているカジュアルさとリッチさの相反する要素のバランスを綿密に構築していきました。 デザインコンセプト策定後は、多岐にわたる制作物を一貫したクリエイティブで表現するために、各デザイン担当と密にコミュニケーションをとりながら、オンライン・オフラインに渡る全てのクリエイティブ統一とルール化を図りながらディレクションを行いました。
シンボルマークであるバイヤーのイラストに、サイト内のキュレーター・食の案内人「ラクリッチおじさん」という役割を与え、表情やポーズのバリエーションを持たせることでラクリッチの個性をより強固なものにしました。百貨店のバイヤーとしての風格と親しみやすさのバランスを大事にし、「ラクリッチ」というブランドが日々に寄り添う存在となるようなキャラクター像に仕上げています。
開封体験は最も期待感を高める必要がありました。一方で過剰包装にはならないように内容を精査し、ユニークで印象的な開封体験を目指しました。バイヤーキャラクターを用いて、今月は何が届いているのかワクワク感が高まるようなデザインを開発。百貨店としてのおもてなしの心を演出した丁寧かつインパクトのあるコミュニケーションを実現しました。 同梱するリーフレットは、非公開の料理の内容が全て明らかになるものとなるため、情報をしっかり伝える必要がありました。そこで、バイヤー独自の目線で料理の解説を掲載。食べるまでの時間も楽しんでもらえるような読み物を目指し、人を介したコミュニケーションに徹底的にこだわりました。
サブスクリプションサービスのEC体験において、はじめるまでの敷居の高さをいかに解消できるかがポイントだということが、社内の体験調査をする中で見えてきました。 仕事などで忙しい大人がターゲットであるため、短時間で簡単に内容がわかるように、TOPページでなるべく情報が完結するようなシンプルな構成にしています。オレンジのアクセントカラー、イラストや手書き文字を積極的に取り入れることで、シンプルな中にも「バイヤー」という人を感じさせるデザインにすることで、開封体験との一貫性を生んでいます。
プロジェクトメンバーへの細やかなヒヤリングを通して、サービスや個性を理解してくださっている点が非常に良かった。その内容をデザインに落とし込んでいただき、ブランドの個性を作り上げていただけたので感謝しております。サイト作成について、作業を進める中で追加のご提案をいただけたり、こちらからの変更要望にも柔軟に対応していただけたので、良いものを作り上げることが出来ました。ありがとうございました。 (株式会社大丸松坂屋百貨店 ご担当者さま)
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Tags:クリエイティブ開発 / 新規立ち上げ
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Date:2022.10-2023.8
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