ブランドコミュニケーション設計
トリドリは、マッチング事業やインフルエンサーマーケティング支援など企業とインフルエンサーをつなぐプラットフォームを展開し、その登録者数や規模の大きさから信頼を得て急成長を続けています。その一方で、インフルエンサーマーケティング市場の中で会社としてどうあるべきか、インフルエンサーと企業のマッチングを叶えることによって社会に提供できる価値は何なのかなど、ブランドの指針設計が事業成長のスピードに追いついていない状況でした。そこでFRACTAとともに、本質的な課題を探りながらブランド指針の定義を行い、コピーやLPの表現など、アウトプットに落とし込んでいきました。
まずは、インフルエンサーマーケティング支援を行う企業の訴求内容について現状を調査するべく、BtoB企業の展示会へと足を運びました。そこから見えてきたのは、SNSマーケティングの有用性や価値をすでに理解している人をターゲットとしてサービス特性を主張する企業が多く、そもそもインフルエンサーとの共創が広告主である企業にどんな価値をもたらすのかについて言及する企業はほとんどいないという状況でした。価格面や手軽さ、圧倒的な登録者数といったサービスが持つ機能的価値と社会のニーズの間にズレがある印象を受けたため、ターゲットを切り替えてコミュニケーションを展開する必要があると感じました。これまでは予算や知識のある企業、または大手企業にしか開かれていなかったPRという手法を、トリドリの活用を通して個人事業主にも開いていける価値がある。それが社会のニーズに応えながら、トリドリにとっても新しい市場でのパイオニア的ポジションになりえると考えました。
次に展示会で得られた仮説を検証するため、トリドリの社員の方々へインタビューを実施しました。インフルエンサー担当、広告主担当、そして役員と、役割や立場の異なるメンバーにそれぞれヒアリング。そこから、世間がもつインフルエンサーのイメージと実情には大きなギャップがあることが明らかになりました。一部の報道などからネガティブな印象をもたれることもあるインフルエンサーマーケティングですが、インフルエンサー自身は個性と影響力を活かして商品の魅力を伝えるスキルが高く、自身のコミュニティへ有益な情報を提供したいという意識が強い人々であることが改めてわかりました。インフルエンサーとフォロワー間のコミュニティにはもともと深い絆がありましたが、それがインフルエンサーマーケティングの普及によりいつの間にかマネタイズする対象になっていったという市場の変遷が見えてきました。こうした背景から、インフルエンサー本来の価値に焦点を当てて、インフルエンサーとの共創が企業にもたらす価値を訴求する方針にてご提案しました。
訴求方針の提案と同時に、ブランドとしてこれからどう舵切りするか、どこに向かうべきなのかを、市場とともに具体的な定義づけを進めていきました。これまでのトリドリマーケティングでは、所属するインフルエンサーの数や対応領域の広さをアピールすることでサービスの強みを訴求してきましたが、その根底にある自分たちの強みはなにか、インフルエンサーの魅力やマーケティングなど、根本の定義からディスカッションを通してともに定めていきました。ディスカッションでは大手企業から商店街の個人事業主まで、「PR」という手法を全ての人が活用できるようにする、現代における「PRマーケティングの民主化」を実現しうるサービスなのではないか、SNSにおけるフォローフォロワー間のコミュニティ力を最大限発揮できるコミュニケーションにしていくべきだという議論がなされ、“届けたいコミュニティに商品を届けられるサービスである”という定義の輪郭が徐々に鮮明になっていきました。
ディスカッションを経て、トリドリは届けたい生活者コミュニティに商品やサービスをつなげる役割を担うことができる。そして新しいターゲット層である個人事業主をはじめとしたPRにまつわる知識や経験がない人でも、トリドリの提供価値を理解してもらえるようなわかりやすい訴求が必要だという結論に至りました。
そこから、これまでトリドリと接点のなかったターゲット層にも自分ごととして捉えてもらうべく、LPに載せるコピーを検討していきました。「PRマーケティングの民主化」を叶えられるサービスという発想から、コピーは「商品に自信がある、PRに自信のないすべての人へ。」に決定しました。サービス認知からトリドリへの相談に至るまで、ターゲットの思考に沿って適切なメッセージングを届けるため、トリドリの成長フェーズごとの要素を整理してご提案しています。
価値定義やコピーをもとに、個人事業主が目を止めてくれる、かつ一過性ではなく活用し続けられる耐久力の高いコンテンツとして動画の作成を提案しました。トリドリのサービス特性を伝える前に、まずはユーザーが抱えているPRに対する悩みに言及。次にSNSには独自のルールがあり、それらを熟知しているPRのプロフェッショナルがインフルエンサーであることを伝えた上で、トリドリマーケティングの利便性を紹介していくストーリーを作りました。そこでユーザーの代表としてラーメン屋の店主を主人公に設定し、美味しいラーメンを作っているのにお客さんが増えないという切実な悩みを起点に、マーケティングの専門用語は一切使用せず、優しい言葉とトリドリの現行トーン&マナーを踏襲した親しみやすい表現でストーリーを展開しました。ユーザーに気持ちよく伝わるには何が必要か、チームで綿密に吟味し、アニメーションに落とし込んでいきました。
特にこだわった点は、どんな写真でどういった言葉で、さらにはいつ投稿するかで反応が変わるSNS独自の文化を表現する箇所です。リアリティを持って伝えるために、主人公であるラーメン屋にまつわる実際のトリドリインフルエンサーの投稿を使用することで、商品の魅力を伝える方法はさまざまであり、それがインフルエンサーの魅力でもあることを直感的に伝えています。
また、LPはターゲットに自分ごと化してもらうことを目指し、事業側の悩みや視点を織り交ぜながら、既存のキャラクターを活用して親しみやすい形で情報設計を行いました。
特徴としては、これまでのLPではなかったインフルエンサーの効果や効能を数値で可視化している点です。自分ごと化されづらい要因の一つに、どんな効果があるのか不明瞭という現状を踏まえ、結果を数字で見せていくことにより情報の透明性を担保しました。データの記載にはインフォグラフィックを採用。ポップな印象をプラスしながら直感的により早く伝わるデザインにすることで、PRに苦手意識のあるユーザーにも目に止めてもらえるような優しいコミュニケーションを狙っています。併せて多種多様な顧客の声を掲載し、安心感の醸成と自分ごと化しやすい設計に調整しました。
弊社のサービスの必要性が届いていない新規潜在層に向けた認知が弱く課題でしたが、今回のお取組みによりトリドリ独自のインフルエンサーの価値・魅力を伝えると共に、これまでリーチできていなかった層に意識転換を促すことのできるブランディングが実現できたのではないかと思います。
(株式会社トリドリ ご担当者さま)
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Tags:クリエイティブ開発 / サービスブランディング
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Date:2023.06-10
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Planning:FRACTA
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Project Management:FRACTA
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Copy Writing:FRACTA
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Art Direction:FRACTA
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Design:カクタス
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