天然由来の素材や環境への配慮、しっとりとした洗い上がりを叶えるため「枠練りコールドプロセス製法」にこだわりをもつ同社ならではの特徴を表現するため、試作品を提供いただくほか、こだわりの背景を理解するためのヒアリングを実施しました。
どんな人を思い作られた製品であるか、このブランドで表現したい世界観や思いを正しく理解するため、石鹸作りを始められた代表のお母様のご経験や、新規ブランド展開に込めた思いを紐解きながらお話を伺いました。
その中で、製品を届けたいお客様やブランドとして届けたい体験を具体化し、ブランドストーリーに展開。「本当に自分に合った石鹸でありのままの肌と心に戻る時間・空間を届けたい」という思いから、「いつも頑張り、普段の鎧を脱げない自分や、他人と比較され、比較してしまう環境に疲れている人へ。1日の終わりに素の自分に戻れるような体験」を届けるブランドと定義しました。「洗顔という行為や香りに没入することは、外部との繋がりを遮断し、自分だけに向き合い大切にすることだから。」という理由が込められています。
前段でまとめたブランドストーリーを中心に、独自の強みと世界観を構成する要素を整理し、今回展開する新規ブランドが最も適切に伝わるコンセプトとタグラインに落とし込みました。独自の強みである素材や製法へのこだわり、多様な肌質・好みの香りに合わせたプロダクト設計と、世界観を構成する感覚的要素が分断されることなくつながることを目指しました。
表現やアプローチの異なる発案と調整のほか、他社スキンケアブランドのブランドコンセプトや訴求方法を紐解きながら検討を重ね、「わたしを脱いで、素肌にもどろう。Just be yourself.」というコンセプトが採用されています。また、ブランドネーミングにおいては、記憶への残りやすさや語呂、ブランドを象徴する要素が込められているかなどの観点を元に開発。フランス語で「脱ぐ」「脱皮」などを意味する「mue(ミュー)」と名付けました。
ブランドの思いやコンセプトを的確に表現するため、イメージを構成するエッセンスを「機能・性質要素、思想、テンション、ターゲット指向性」の4軸で言語化。軸ごとの要素のうちより中心となるワード「香り・素の自分・心が落ち着く(*一部抜粋)」などの要素とブランドコンセプトである「わたしを脱いで、素肌にもどろう。」が強く感じられるイメージボードを作成しました。思い描くイメージをすり合わせながらブランドの世界観を表すトーンや、ロゴを含むクリエイティブ開発に取り掛かりました。
ロゴ開発においては、複数表現の方向性を提示する中で「素の自分を自由に表現する」ことを指針に据えました。最終的に「他人から見える自分 = you = u 」から、洗顔を通じて「素の自分 = me 」が浮かび上がってくるコンセプトを込めたロゴが採用されています。また、使用シーンや香りを想起させるビジュアルイメージ、ECサイトのアートディレクションを実施。デザイン提案においては、納得感のある意思決定をサポートできるようフィードバックの視点を明確にした上での進行を心がけました。
さらに、オンラインとオフラインで一貫した世界観の表現や体験を実現するため、コンセプトやブランドの思想、こだわりを元に、化粧箱のほかシールなどを含むパッケージ類の制作にも携わりました。「mue」のブランドコンセプトのほかにブランドの土台となるキーワード「優しい、サステナブル、オーガニック、シーンを想起する香り*一部抜粋」などを元に、ハンドメイドの丁寧さや使用シーンに合わせた表現を具現化しています。さらに、世界観を踏襲し「mue」らしさを表現した商品名の開発、ECサイトやパンフレットでの表現を担うイメージ撮影にも参画しました。今後ブランド運営や表現の指針として役立てていただけるよう、プロジェクト中に策定したブランドコンセプトやストーリー、アートディレクションにおけるポイントの他、あらゆるタッチポイントごとの表現方針をまとめたブランドガイドラインを作成しました。