ECサイトのリニューアルやリブランディングを実施するには、一定の予算が必要になる場合がほとんどです。そのため、現状のECサイトの機能やデザインに改善の余地を感じていても、リニューアルによる効果を想像できなければ、実行に踏み出すには勇気が必要です。
ECサイトのリニューアルやリブランディングは、売上や利益などの重要な指標を改善できる施策と言えるのでしょうか?
このような疑問を解消するため、FRACTAがリニューアルをご支援したプロジェクトのうち、サイトのローンチから1年以上が経過したクライアントを対象に、「リニューアルのその後」を振り返っていただきました。
今回は、梅体験専門店の「蝶矢」を手掛けるCHOYA shops株式会社 菅さんのインタビューをお届けいたします。
FRACTAとCHOYA shops株式会社のお取組みについて
梅体験専門店の「蝶矢」は梅文化を現代的なスタイルで提案し、おいしさを活かした新しい市場を創造すべく、チョーヤ梅酒株式会社の子会社として2021年に設立されました。
京都と鎌倉に展開している実店舗では、お客様が好みの梅、砂糖、お酒をセレクトしてオリジナルの梅酒や梅シロップを作ることができ、人気を博しています。
オンラインショップも、実店舗と同様に、お客様が「梅」の体験を楽しめる場所へとリニューアルすべく、FRACTAとのプロジェクトを経て、新しいECサイトへと生まれ変わりました。
▼プロジェクトの詳細はこちら
https://fracta.co.jp/blogs/projects/choya
リニューアルを経て、リピート率・満足度の向上と、業務の効率化を実現
サイトリニューアルから1年半ほど経過しました。その後、リニューアルをして良かったな、と感じる変化はありましたか?
CHOYA shops 菅さん:
リピート率、満足度には良い影響が見られました。
まずリピート率の話をしましょう。ECサイトのリニューアル前に、購入から1年以内にリピートで購入いただける率が13%ほどでしたが、リニューアル後には27%ほどにまで向上しました。
リピート率の目標としては50%を定めているのですが、リニューアルの前後で、その目標に対して大きく前進したと思います。
満足度については、購入後にお客様に満足度を確認するようにしております。店舗、ECの両方で満足度を測っていまして、店舗だと80%くらいの方に、5点満点のうちの5点を書いていただいています。一方、リニューアル前のECでは、購入完了後の調査で満点は60%くらいだったのですが、リニューアル後には5ポイント上昇して65%になっています。
定性的には、お客様から「商品選びが楽しい」というコメントを頂くようになりました。そういった「楽しい」というキーワードが増えてきたというのは、強く実感しています。
また、リニューアルの際に、アプリの提案や導入の支援をしていただいたり、予約システムの刷新も行ったことで、バックオフィスの業務時間は40%ほど削減できたというのも非常に大きいです。
ECサイトのリニューアルが実店舗の売上にも貢献
リピート率、満足度には良い影響が見られたということですね。FRACTAのプロジェクトを通じて、売上への影響は、どのように見られていますか?
CHOYA shops 菅さん:
実は、昨年の夏頃から、ECの売上が10%ほど落ちて、一方で実店舗の売上は+20%ほどと、非常に大きく伸びています。ECの売上は落ちているものの、実店舗が大きく伸びているため、トータルでは非常に大きな伸びとなっています。
ECが落ちているのは、昨今のオフライン回帰の影響を受けているものなのかな?と思いますが、一方で-10%という数字を外部要因と片付けて良いのかは、わかりません。
ただ、FRACTAさんとのプロジェクトでは、オンラインの体験を通じて実店舗にお客様が集まることも想定して体験設計を行っていただいたので、トータルでは売上に対してプラスになっていると考えています。
ちなみに、実店舗にご来店いただくお客様も、サイトを見て商品について知っていただいたうえで来店いただいているという声を、店舗のスタッフから聞くようになりました。
蝶矢の梅キットはテイクアウトの場合、店舗からご自宅までのお持ち帰りに、2時間という制限があります。リニューアル以前は、お店に来てから2時間の制限について聞かされ、購入を見送る方が多かったのですが、リニューアル以降は、その制限について理解のうえでご来店される方が増えています。
ECサイトがわかりやすくなったことで、よくECサイトを読んだうえでご来店されている方が増えているということから、リニューアルが実店舗の売上にプラスになっていることが裏付けられていると思います。
サイトリニューアルで改善できなかったこと
ECサイトの売上は落ちてしまったということですが、サイトリニューアルでこの指標は改善できなかったな、と感じているものは何かありますか?
CHOYA shops 菅さん:
サイトリニューアルを通じては、サイト全体のコンバージョン率は実はあまり改善できませんでした。むしろ下がってしまいました。
今回のサイトリニューアルでは、店舗の紹介といったコーポレートサイトとしての機能と、予約や商品注文といったECサイトとしての機能を1つのサイトに統合しました。また、面白いサイトになったことで、購入意欲が高くない方にも閲覧いただいているということも考えられます。
その意味では、計測や比較の仕方の問題でもあるのですが、コンバージョン率に関しては課題が残りました。
蝶矢では、スポットでSNS広告を配信することもあります。広告の費用対効果を良くするためには、ランディングページのコンバージョン率を改善する必要がありますから、今後ケアプラン(※)で取り組んでいきます。
※ケアプラン…FRACTAと(株)リワイアの協同で提供する、サイト構築後の保守・改善を実行する伴走支援プラン
リニューアルして終わりではなく、継続改善も重要な理由とは
サイトのリニューアル後も、ケアプランを利用して、二人三脚でサイトの改善を続けていますね。
CHOYA shops 菅さん:
リニューアル後のケアプランは、非常に費用対効果が高いです。サイトのリニューアル後も、改善したい箇所が出てくるので、対応いただいたりアドバイスを頂いたりしています。また、自分たちでは気づかなかった改善案を頂くこともあり、非常に着眼点が優れていると感じています。
印象に残っている改善施策が1つあります。
蝶矢の実店舗で実施している梅体験に参加を希望されるお客様が多いことで、予約がなかなか取りにくくなっていました。
ケアプランでは、その点に注目いただきまして、ワークショップの予約が取れなかったお客様にも、ご来店いただけるような改善案をご提案いただきました。
具体的には、予約なしで購入できる梅キットを紹介したり、店舗でテイクアウトできるドリンクをお見せするように、サイトのUIを変えるという内容です。実装については工数がかかるものだったので、構築費用を別途お支払いして対応いただきました。
この施策の結果、テイクアウトを例にとると、月間の売上が2倍ほど増えました。この1つの施策だけでも、年間で利益が大きく増えるわけですから、ケアプランや構築費用の費用対効果は、非常に高いと感じています。
FRACTAのプロジェクトと相性の良いブランドとは
プロジェクトを振り返ってみて、どのようなブランド・ECサイトはFRACTAと相性が良いと感じていますか?
CHOYA shops 菅さん:
しっかりとブランドを育てるという意識を持っている会社さんは、相性が良いのではないかと思いますね。
FRACTAさんとのプロジェクトの初期段階で、蝶矢の実店舗にお越しいただいて、商材を体験いただいたこともありました。また、ヒアリングを重ねてブランドを理解していただいた後に、ペルソナやカスタマージャーニーでお客様像を深掘りするなど、サイト制作に移る前段階のすり合わせも行っています。
私たちは、他の会社さんやフリーランスの方とお仕事をする時にも、同じように商材を体験いただくようにしていますし、自分たちでカスタマージャーニーを考えようとしたこともあります。こういった制作に移る前の段階のすり合わせは、当たり前に必要なものだと捉えています。
そのため、FRACTAさんの仕事の進め方を通じて、ブランドのことを深く理解しようとしている姿勢を感じましたし、必要不可欠だと思います。
一方で、カスタマージャーニーを考えてみるとか、そうしたことを経験していない会社さんだと、制作の前の段階の整理を、何のためにやるのか、というのは少しわかりにくいのかもしれません。
そうした意味では、自分たちで試行錯誤してみた経験のあるブランドさんの方が、FRACTAのプロセスは理解いただきやすいのかもしれないですね。
編集後記
CHOYA shops様とFRACTAのプロジェクト事例では、好影響が確認できたポイントとして、以下の4点が挙げられました。
- リピート率の向上
- サイト利用者の満足度の向上
- 業務効率化
- ECサイトから実店舗への送客
ECサイトのリニューアルは大がかりな変更を伴うため、顧客体験の設計から見直すことができます。今回の事例では、顧客満足度・リピート率の改善と、ECから店舗への送客を実現することができました。
また、リニューアルを行う際に業務フローを見直し、必要なアプリケーションの導入を行うことで、業務の効率化を目指すことができます。
これらはECサイトのリニューアルを行うことのメリットであり、リニューアルによる費用対効果を発揮しやすいポイントだと言えるでしょう。
一方で、コンバージョン率のように、ECサイト内のみで完結し、なおかつ振り返りを短期間で行える指標に関しては、大幅なサイトリニューアルを単発で改善しにくいということも示唆されました。継続的かつ、1つ1つは小規模な改修を繰り返すことで、改善を目指すことが望ましいのではないでしょうか。