文化商店裏話〜クリエイティブ編〜

文化商店裏話〜クリエイティブ編〜

こんにちは、CSV局の花沢です。9月に開催した文化商店、みなさん楽しんでいただけたでしょうか?来場いただけなかった方も、当日の会場の様子をレポートでお届けしているのでぜひご覧くださいね!

文化商店レポート▶︎https://fracta.co.jp/blogs/journal/journal_230926

今回は、文化商店裏話シリーズより、クリエイティブ編をお届けします。

「文化商店裏話シリーズ」とは?

文化商店の始まりから実施までの裏側をお届けするシリーズ。全4回予定で、文化商店の構想から企画、ワークショップにクリエイティブと内容をわけてご紹介していきます。

第三回目はクリエイティブ編として、文化商店たる要素を構成するデザインまわりについて、FRACTA アートディレクターの西澤にインタビューしました。


ー「文化商店」というタイトルからどんなクリエイティブイメージが想起されましたか?

西澤:どこか馴染みがある日本土着の文化的なイメージと「未来の文化」というまだ誰も見たことのないイメージを掛け合わせて、何か新しい表現ができるなと感じました。また、タイトルにも表れている「未来の文化を売り買いする商店街」というコンセプトにワクワクしましたね。僕が最初に感じたこのワクワクを、来た人にも直感的に感じてもらえるようなクリエイティブにしようと考えました。

ー実際に採用されたのは「商店らしさ」のあるクリエイティブでした。この「商店らしさ」は賑やかさをもたらす反面、雑多な印象もあるかと思います。今回のクリエイティブで意識したことはありますか?

西澤:僕は整理されていない雑多感が、逆に目移りするような冒険心を駆り立てるのではないかと思っていました。普段僕がブランドのクリエイティブを設計するときは、核心的な部分だけが残るように極力要素を削ぎ落とし、洗練させることに注力します。でも文化商店では、要素を足しても芯の部分の印象が変わらないような表現を意識しました。

ー招き猫のモチーフが象徴的ですが、こちらも「商店らしさ」「招き猫=商売繁盛」などのイメージがベースになっていますか?

西澤:その通りです。招き猫は左右どちらの手をあげているかで呼び込むものが変わるのですが、モチーフで採用したのは左手を上げている、人を招くものになります。

加えて招き猫は色によって招くご利益が変わるのですが、「文化万来」を願うオレンジ系統のグラデーション模様の猫、「未来繁盛」を願う緑系統のグラデーション模様の猫、というように、これまで意味付けされていなかった色味を用いて、文化商店に合わせたオリジナルの招き猫を生み出しました(笑)。


ー招き猫はガラポン抽選会の景品としてステッカーにもなっていて、多くのお客様にステッカーがほしいとおっしゃっていただき、社内メンバーからもかわいいという声が多くあがっていました。文化商店の愛着要素のひとつとなりましたね。

ー次にお伺いしたいのは、ロゴについてです。末広がりな筆文字が目を引くデザインですが、どこからインスピレーションを受けたのか、こだわった点を含めて教えてください。

西澤:祭で着る半纏・法被や提灯に使用され、活気の象徴である「江戸文字」の粋な雰囲気から着想を得ました。とにかく人で賑わい、活気が溢れ、ブランドさんと来場者のコミュニケーションの連鎖で大きな文化が生まれてほしいという願いを込め、粋な見た目にしています。

あくまで、古風な雰囲気に寄りすぎないよう現代的なデフォルメを取り入れているところはこだわったポイントです。



ー「文」の一文字はアイコニックに会場入り口の暖簾や提灯など、会場装飾の随所に散りばめられていましたね。

ーロゴが歴史ある日本文化らしさを象徴する表現である一方、テキストの書体はまた異なる表現をされていますよね。こちらにはどんな意図がありますか?

西澤:クリエイティブ全体を通して、漫画のセリフでよく用いられる“アンチゴシック”と呼ばれる書体を、メインで使用する書体として選定しました。こちらは漢字がゴシック体/ひらがな・カタカナが明朝体で構成される書体なのですが、このミックス感が、文化商店ならではの文化と未来が交錯するような世界観にマッチすると思いました。


ー会場ではクリエイティブ同様に、参加型企画(スタンプラリー・ガラポンなど)も来場者を楽しませていました。これらのアイテムはお客様が直接手にとるものでしたが、工夫したことはありますか?

西澤:企画はそれ自体がユニークで、デザインで何か工夫を凝らさずとも楽しんでいただける予感がありました。なのであくまでデザインは「それらしさ(=商店街のいち企画としてのガラポンらしさ)」を損なうことなく、文化商店らしさを盛り込むことを心がけました。

また、グラフィックエレメントとして招き猫を設定したおかげで、「スタンプに使用したら可愛いかも?」など、デザインする側としても遊び心を持って楽しむことができました。



ー特設サイトのデザインについても教えてください。サイトはかなり動的に組まれていますが、こちらも商店らしさを意識した結果でしょうか。

西澤:そうですね。商店街、と聞いたときに誰もが思い描くガヤガヤした雰囲気をサイトでも出せないかと思い、動的な表現を散りばめました。

新しく発足したイベントなので、あくまでサイトとしての情報の得やすさは損なわない範囲で、文字を傾けるなどの遊びを取り入れています。ちなみにPCレイアウトで左端に流れる文字のあしらいは、店先によく出ている電光掲示看板から着想を得ています。

 

ー今回のクリエイティブ制作は多岐にわたりましたが、全体感を統一するために意識したことを教えてください。

西澤:「文化商店」をFRACTAが持つひとつのブランドと捉え、ブランドガイドラインを制定する際と同じように、文化商店のVI(Visual Identity)を最初に定めました。核となる「未来の文化を売り買いする商店街」というコンセプトから発想されるカラーや書体・グラフィックエレメントをブランドの個性として最初に定め、それらを制作物へうまく踏襲していくことで、統一されたビジュアルコミュニケーションとなるよう心がけています。 

ー文化商店当日の会場やお客さまの様子、それぞれの企画や制作物など完成したものを直接見ていかがでしたか?

西澤:会場の設営が完了したとき、制作物の見栄えはとにかく“想像以上”の一言でした。僕の力だけでなく、FRACTAのプロジェクトメンバーの働きや、施工に携わってくださった協力会社の方々のお力があって、僕の想定をはるかに上回るパワーを持ったクリエイティブになったのかなと思います。

また、FRACTAのブランドデザイナーは普段エンドユーザーの方々の反応を見る機会はなかなかないのですが、今回は来場されたお客様から直接お褒めの言葉をお聞きすることができました。そういった意味で文化商店は僕にとって非常に良い刺激になりましたね。


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今回はクリエイティブ編として文化商店の世界観を構成するデザインについてお伝えしました。これまでのFRACTAらしいクリエイティブの枠組みを超え、「文化商店」を彩る新たな表現へ取り組んだ結果、多くのお客様を文化商店へと引き込み、文と化の出会いや未来へ思いを馳せること、そして純粋に文化商店を楽しんでいただけました。

次回は最終回、ワークショップ編です。文化商店で実施された6つのワークショップでは、出店ブランド同士のコラボレーションが実現しました。文化と文化が交わり、新たな体験を提供することとなった裏側をお届けします!続編もぜひお楽しみください。