ポイントサービスでブランドとファンの関係性は築けるか?

ポイントサービスでブランドとファンの関係性は築けるか?

突然ですが、皆さんポイントカードはお持ちですか?

はじめまして、FRACTA Research & Implementation(RI)局の萩原です。
小売店の販売員出身の私は、この「ポイントカードお持ちですか?」という台詞をこれまで幾度となく唱えてきました。

紙製のポイントカード(スタンプカードと呼んだ方が馴染みがあるかもしれませんね)に始まり、最近ではスマートフォンアプリでポイントを貯めることができるなど、さらに多様化が進んでいるポイントサービス。

今後ますます発展が見込まれるこのポイントサービスに焦点を当て、今回はその変遷に触れながら、ブランドと顧客との関係性を築くツールとしての可能性についてお話ししようと思います。

ポイントカードの始まり

そもそもポイントカードというものはいつから存在しているのでしょうか?

諸説ありますが、1850年頃にアメリカで、仕入れの手違いで洗濯石鹸を大量に抱え込んだ小売業者が、包装紙にクーポン券を貼り付け、それを何枚かためると絵画と交換できるというサービスを提供したことが始まりとされています。

その後、スタンプを発行し、それを何枚かためると商品と交換するサービスが見られるようになります。1890年代には、スタンプ・サービスをシステム化・商品化し、複数の小売業者に販売するというスタンプ専業会社が出現したそうです。(*1)

さらに、1970年代後半から1980年代に登場したクレジットカード会社が発行する報酬プログラムや、航空会社のマイレージプログラムが、顧客の忠誠心(=ロイヤルティ)を高めることに成功したことから、他の業界でも同様のプログラムが導入されるようになったとされています。(*2)

日本においては、1990年代に入ってから小売業界でポイントカードが普及し始めたことをきっかけに、鉄道会社やガソリンスタンド、飲食店など様々な業界でポイントカードの導入が進んでいきました。

日本国内におけるポイントサービスの変遷

1990年代に小売業界で普及し始めたポイントカードは、商品を購入するたびにポイントがたまり、一定数のポイントがたまると商品と交換することができるといった仕組みでした。

その後2000年以降になると、インターネットや携帯電話を通じたポイント提供が進み、商品の購入に留まらず広告の閲覧に対するポイント発行や、ポイント交換といった事業も拡大していきました。(*1,3)

そして2010年代に入り、スマートフォンが普及したことで、ポイントカードのデジタル化が一気に進んだように思います。スマートフォンアプリを利用してポイントカードの管理ができるようになり、QRコードやバーコードを読み取ることでポイントをためたり商品を購入したりできるようになりました。

何枚もカードも持たなくて良いというメリットがある一方で、ポイントサービスの多様化・複雑化が進んだことで、カード自体を「持たない・ためない」という選択をしている方も多いのではないでしょうか。

ポイントサービスはブランドのファンを生む?

ここからはブランドが独自に導入しているポイントサービス(ハウスカード)について、顧客との関係性という点でどのような役割を果たしているかを紐解いていこうと思います。

顧客へポイントを付与する場合は、購入金額に応じたポイントの付与というのが一般的です。一律で同じ付与率を採用することもできますし、顧客の購入情報に基づいて設定した会員ランクなどに応じてポイントの付与率を変更することも可能です。

また、誕生日などの情報を登録することで、顧客の誕生日月にポイント付与率を変えるといった仕組みも一般的です。

もしポイントカードが言葉を発するとしたら、「いつも買い物してくれてありがとう!ポイントをいつもより多めにつけたよ!」、「今月誕生日なの?!おめでとう!お祝いにポイント還元率アップしたよ!」といったところでしょうか。

ポイントの付与は、いわばブランドからのひとつのメッセージであり、「お得意様」という古くからある日本独自の商習慣の名残とも言えそうですね。

ではためたポイントを使用する場合はどうでしょうか?
支払いの一部にためたポイントを使用できたり、一定のポイントがたまったらサービスを受けられたり、商品と交換ができたりなど、「ポイントを使う」というフェーズにおいては沢山の選択肢があります。

ブランドのライトなファンに継続して買い物をしてもらいたいのであれば、支払いの一部にポイントを使えるという方法が有効でしょうし、ライトなファンを徐々にコアなファンへ育てるためには、一定のポイントがたまったタイミングでサービスを提供するということも有効です。

そしてコアなファンにとっては、ためたポイントとの交換でしか得られない非売品のブランドオリジナルグッズは是が非でも欲しいアイテムとも言えるでしょう。

また、最近ではポイントを慈善団体等に寄付することができるブランドもあるようです。
ポイントサービスは、社会に向けてのメッセージ発信の側面も持つようになり、こういった活動がきっかけでブランドに好感を持ち、ファンになるというケースも十分に考えられます。

このように、ポイントを介して知らず知らずのうちにブランドと顧客とのコミュニケーションが生まれているのです。

ポイントサービスをコミュニケーションツールへ育てるために

ここまで、ポイントサービスがさもブランドと顧客を繋ぐ魔法のツールかのようにお話ししてきましたが、コミュニケーションツールとして成立するためには、大前提として、ポイントカードを所持してもらわなければなりません。
そして、この「所持」こそが最大の壁といっても過言ではないでしょう。

店舗での買い物をイメージしてみてください。会計の際「ポイントカードはお持ちですか?」と聞かれたら、みなさんはなんと答えますか?

作ることに抵抗がない場合はポイントカードを既に持っていたり、新たに登録したりします。一方でポイントカードを作ることに抵抗のある方も一定数いるでしょう。

例え特典があったとしても、好きなブランドや、来店頻度の高いブランド(店舗)でなければ、ポイントカードを作るハードルが高いと感じる方は多いように感じます。つまり、そもそもブランドにある程度の愛着がなければ、いくらポイントサービスが充実していても、登録の意向にあまり影響しないということになります。

では、その「ブランドに愛着を持ってもらう」にはどうしたら良いのでしょうか。その鍵を握るのがブランディングなのです。

次回は、ブランドへの愛着とブランディングについて深掘りしていきたいと思います。ぜひお楽しみに!

 

[出典]
*1)ニッセイ基礎研究所「進化するポイントカードとその将来性」
*2)ANA「マイルの教室」
*3)矢野経済研究所「ポイントサービス市場に関する調査を実施(2022年)」