こんにちは。FRACTA Research & Implementation(RI)局の城島です。
今回の記事では、私たちの社内ディスカッションの内容を取り上げてみようと思います。
ディスカッションは、FRACTA代表 河野からのSlackでの問いかけをきっかけに始まりました。
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今話題のChatGPTを使って、新規事業のアイディア、ネーミングやロゴデザインの案出しを一瞬で行うことができる。
すると、やがてFRACTAのような会社がなくなっていくことは考えられるか。
・・・みんなはどう思う?
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(概略)
AIの進化がもたらすビジネスへの影響については、至るところで繰り広げられている議論ではありますが、社内において「自分ごと」として本気で考える機会はあまりなかったように思います。
今回この内容を取り上げた理由は、結果的にFRACTAメンバーが自分達の価値を定義し、プロジェクトを進める上で何を大切にしているか鮮明になったから。
一人でも共感してくださる方が増えたら嬉しいと思い、発信することにしました。
※ChatGPTとは・・・
米OPEN AI社が開発した、人工知能(AI)を使ったチャットボット。ユーザーが入力した質問に対して、人間に近い、自然で高度な回答を導くことができ、2022年11月の公開以来その機能面、成長性に注目を集めています。
ディスカッションを分析する
私が分析した結果、議論は下記の分類に分けられました。
様々な意見を分解した内容や、複数意見の共通キーワードを抽出しながら付箋に書き出し、近いものをグルーピングしたものです。
(1)AIが苦手な領域、AIの限界について
(2)AIと人間のそれぞれが得意な領域について
(3)FRACTAの人間が担う価値について
(4)その他
これらをひとつひとつ見ていきます。
(1)AIが苦手な領域、AIの限界について
・AIが生み出したアウトプットのクオリティは、そのまま採用できるレベルではない・AIが生み出すものは「それっぽい」もの止まりである
これらは、AIに対して比較的マイナスなイメージを表す意見です。
多くのメンバーが共通して挙げるキーワード「それっぽい」を紐解くと、「AIはデータからの学習しかできないため、既視感のあるものしか生み出せない」というAIの特性そのものに起因しているのではないかという発見もありました。
また、AIに対する人間側の質問力が問われるという意見も出ていました。
新規ビジネスのアイディア出しをAIに依頼する場合、ターゲットの基本情報だけでは質問の精度としては低く、納得のいく回答を得るためには、あらゆる前提条件、取り巻く環境などAIが答えを出すための情報を十分に伝えることが必要です。その前提条件となる情報を適切に伝えるために、人間側でビジネスにおける思想、叶えたいことなどを整理しておく必要があるかもしれません。
内容が同じでも、問いかけ時の要件やニュアンス次第でAIの回答も変わってくるので、結局は扱う人間の能力が重要になってくるという考え方です。
質問の仕方が大切なのは対人間でも同じですが、人間は臨機応変なフォローや気遣いができる点がAIとは違いますね。
(2)AIと人間のそれぞれが得意な領域について
・「早く・安く・それっぽい」アウトプットを「大量に」欲しい場合はAIが向いている
・前述の「それっぽい」ものからヒントを得られることもあるので、手は借りたい
といったAIの得意領域や、AIを使うことのメリットもありながら、
・生み出したアウトプットの中から選んだり、判断するのはあくまで人間の仕事
・人間同士でしか生まれない温度感や信頼関係がある
・人間にしかできない抽象的で曖昧な表現がある
このように、どちらの方が優れているということではなく、AIが得意な部分をうまく活用し、人間だからこそできる作業と組み合わせることが望ましいという意見も多く挙げられていました。
FRACTAの仕事における強みは、ブランドの状態によって支援方法や体制を調整し伴走すること。そしてブランドの中にいる人たちの思いや考えを表現するために一緒に考えるプロセスを大事にしていること。そういったことが伝わって仕事の依頼をいただいているという背景から、「安く・早く・それっぽい」アウトプットの大量生産は求められていない。というのも社内で共通する認識でした。
なぜそのような認識が生まれたのか、次はFRACTAの仕事の特性についてまとめてみます。
(3)FRACTAの人間が担う価値
この項目では「私たちFRACTAの仕事」に焦点を当てます。
FRACTAの仕事は「なくならない」。なぜかというと、
「アウトプットだけでなく、そこまでのプロセスに意味がある」から。
というのが結論でした。
私たちが日々のプロジェクトで行っている重要業務については、
・対話を通じて理解を深める
・想いを引き出す
・決断を後押しする
といった意見が挙げられており、例えばWebサイトの構築やロゴデザインなど形のある成果物の創出よりも、目に見えないプロセスの部分にフォーカスされているのがとても印象的でした。
そして、プロセスの大切さに繋がるキーワードとして挙がったのが、「対話」や「共有」。
・・・改めて気がつきましたが、結構人間味のある集団というイメージが滲み出ていますね。
アウトプットまでのプロセスでクライアントとFRACTAのメンバーお互いの理解を深め、信頼関係を築き、生まれるクリエイティブの質を上げる。そしてそのプロセスの共有に欠かせない「対話」を、FRACTAメンバーは特に大事にしているということです。
一瞬でポンっとアウトプットを生み出してくれるAIには、この「プロセスの共有」フェーズはありませんね。
本質を見出す鍵は対話
私は、RI局に異動する前はデザイナーだったので、たくさんのブランド、プロジェクトに携わってきました。
その経験の中で、最初は「FRACTAに全てお任せ」な姿勢だったクライアントが、プロジェクトが進行するにつれ「一緒にブランドを作っていく仲間」のようなコミュニケーションが生まれるなど、クライアントの意識の変化を感じたことがあります。
こちらからの様々な提案やそれをとりまくコミュニケーションを重ねていくうちに、クライアントの中で「本当はこうしたかったんだ」、「こうあるべきなんだ」という想いに気づいたり、あるいは新しく芽生えたりして、それを次第に顕にしてくださるようになっていくのです。
そうやって心を開いてもらえる関係性になれると、色々なことが一気に前に進んだりするものです!
このように、こちらから望ましい道への一方的な誘導や提案をするだけではなく、クライアントの気持ちを高めたり、本音を引き出すことも私たちの使命なのかもしれません。
その中でやはり重要になるのは、みんなが口を揃えて言う「対話」。相手の顔色や表情から感情を伺い、声の調子や言葉の細かいニュアンスの違いを汲み取り、擦り合わせるという繊細なやりとりを、私は非常に大事にしてきました。他のメンバーも同じだと思います。
このような、文面だけでは実現できない「対話」は、AIにはまだまだ難しいのではないでしょうか。
(4)その他
どこにも属さない新鮮な意見として、
・FRACTAの思考を搭載したAIサービス(ChatFR)を作りましょう
というエンジニア視点からのアイディアもありました。
・・・もしも実現できる未来があると想像したら、夢があってとても楽しい!
ChatGPT談議のまとめ
1.FRACTAが考える、FRACTAらしいやり方
冒頭でも触れたように、この議論を通して「FRACTAの人間が行う仕事の価値」が社内の認識として明確になりました。
前項目(3)の部分にフォーカスした考察をまとめます。
クリエイティブの絡むプロジェクトは、それなりに時間がかかります。
何もかもトントン拍子に進むほうが稀で、考える・手を動かす・話し合う・方向性を変えてみる・時に勇気を出して振り出しに戻る決断をする・・・などと、妥協しなければなおさら様々なことが発生するからです。
勿論、最良のアウトプットまで最短時間で駆け抜けられるのが理想ですが、費やした時間は無駄ではなく結果的に必要なプロセスであったということが多いです。そのプロセスがあるからこそ道が開けたり、生まれるクリエイティブのパワーや愛着に繋がったりします。
FRACTAメンバーは、そんな山あり谷ありのプロセスをクライアントと「共有すること」、同じ方向を向き、目的に向かって「一緒に進むこと」にこだわっています。
単なる依頼主と制作担当の関係でなく、ひとつのブランドチームとなって同じゴールを目指したい。
これはFRACTAらしい考え方であり、FRACTAが謳う“伴走”スタイルの特徴であると思います。
ただし、このスタイルは自分たちが信頼される存在でいなければ成り立ちません。全ての大前提として必要な「信頼関係の構築」は、FRACTAが常に意識している重要課題でもあります。
しかし一方で、「プロセス」は私たちFRACTAとクライアントにあたるブランドの間で生じるものであって、エンドユーザーの目に直接見えるものではないかもしれません。
ですが、まずはブランドの中の人が、自分達のブランドやその大事な一部となるクリエイティブを好きになること、共感することが大事だと考えています。その姿勢は、ブランドが自走し末長く成長し続けるために必要なもの。
FRACTAはこれからも様々なブランドの良きパートナーとして、理想的な状態に導くために支援していきます。
2.このような時代に、何が必要?
AIがクリエイティブを完全に担うようになるのはきっとまだまだ先。
「社会に実装する」ところまで担えるのは自分達だけである。
社内全体で、このような考えが共通していることがわかりました。
そして、そんな時代だからこそ、改めてクリエイティブに「誰が・なんのために・どんな経緯を経て、形にしたのか」が問われる世の中になるのではないか。
このように、議論は締めくくられました。
これからより一層精度が上がり続けるであろうAIは、私たちの敵ではないし、張り合う相手でもなく、むしろ私たちの存在の需要を高める追い風かもしれません。
FRACTA代表 河野の言葉を一部借りると、
「AIは次代のクリエイティブを担う筆や鉛筆のうちのひとつ」。
そんな感覚で、AIを自分たちでコントロールしうまく味方につけ、可能性を広げていくことが理想的だと考えます。
私はこれまで、AIのことを深く知らずに、良い点よりもネガティブなイメージを強く持っていた節がありましたが、考え方を変えるきっかけになりました。
まずはAIについて理解し、効果的な活用方法を考える能力も、今後いっそう必要になっていくのではないでしょうか。
FRACTAはブランドの立ち上げから強化、DX、体制構築まで企業の成長に寄り添い伴走するトータルブランディングパートナーです。ブランドの挑戦をテクノロジー、クリエイティブ、ビジネスの力で支えます。
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