こんにちは。本記事では、音声メディア「FRACTA Future Forecast|未来と文化の交差点」の第7回の様子をお届けします!
今回は初めてゲストとして、今年FRACTAに入社したプランナー・あさこさんを迎えました。アパレル業界歴の長いあさこさんと、現在業界が抱えている課題からファッションの未来まで幅広くお話ししました。
ものを大事にする文化は根付いているはずなのに?
つっちー:あさこさんから経産省の「ファッション未来研究会」のレポートをシェアしていただいて、盛り上がりましたね。
あさこ:日本のファッションだけじゃなくて、モノづくりや技術者の方々のタスクフォースが組まれていて、とてもよくまとまった報告書なんですよね。
つっちー:著名なアパレルやECを始め、デザイナーさんも集まっていますね。
あさこ:年齢の幅も広くて、読んでいて本当に感動しました。一番感動したポイントは、経済産業省の資料にも関わらず、デザインにこだわってちゃんとファッション感を打ち出しているところですね。そこが一番のメッセージになっているなと。
つっちー:僕が一番感じた部分だと、SDGsの流れはあるけど、やっぱり大量生産、大量消費、大量廃棄というところはファッション業界とは切っても切り離せないところがあるのだなと思いました。平たい感想になってしまうのですが「じゃあ作る量を減らした方がいいんじゃないの」と。ただそれは極論なので、今後ファッションとかファッション業界におけるSDGsってどうなっていくの?といったお話しをいろいろ聞きたいです。
チャーリー:(今まで真面目ですが)真面目な回ですね。
あさこ:ファッションには哲学的な要素や、人によって想いもあるのですが、なぜこんなに大量生産などが悪いのかと言うと、例えばCO2の排出量についてファッション業界がものすごく負担をかけているんですよね。
少し前には、バーバリーが売れ残りを焼却処分していたことも問題になりました。
チャーリー:あれは世界的に話題になりましたね。
あさこ;誰も腕を通していない服をそんなに捨てているとは、衝撃的な出来事でしたね。でもファッション業界からすると、実はもうずっと行われてきたことで、それが単純に明るみになるような世の中になったんだなという実感がありました。
こうしたことをきっかけに、日本でもサステナビリティという言葉が普通に語られるようになったなと思います。
チャーリー:若い頃ファッションがすごく好きで、でも買っていない服はどこに行くのだろうという問題は意識の中に含まれていなかったなと思います。ファッションに関する透明性が、今までそもそもなかったのだなとも感じました。
あさこ:そこはサプライチェーンの課題でもありますね。消費者の立場からすると買われない服は作る側の責任ということで、「どうなってるの」とつっこむことができますし、買われなかった服よりも自分達が着た服をどうしようという問題の方がありますよね。
チャーリー:今でこそヤフオクやメルカリを通して引き取ってもらえる機会はありますが、引き取ってもらった服も結局どうなっているのかわからないですよね。
あさこ:あとは求められるブランドは高値で取引されるけど、そもそも土俵に上がらない服は淘汰されるのかどうかもわからないですよね。
つっちー;僕はややミニマリストではあるのですが、基本的に長く着れる服を買おうという価値観があります。この価値観が、バーバリーの出来事をきっかけに業界として向き合わざる得なくなったのかなと思いました。日本でも各ブランドさんが取り組み始めている印象はありますが、USやヨーロッパだとそもそも「長く着れる服を買う」という価値観を前提としたブランドが多いのでしょうか。
あさこ:ヨーロッパはそもそも生き方や生活様式で、物を大事にする文化が根付いていますね。その文化があるからこそ、過剰なものを追い求めない故に、サステナブルなブランドが早くから台頭している印象はあります。
チャーリー:日本人も物持ちが良いとは聞きますね。これまであさこさんは海外の大学に行かれたりと海外文化に馴染みがあるとは思うのですが、物持ちとか物選びの観点が日本人とどう違うのか気になります。
あさこ:日本の「もったいない」という言葉が、外国でもそのまま使われているように、物を大事にする文化はあるとは思うのですが、生活様式や世代によって価値観は違うのかなと思います。色々な人にインタビューしまくりたいですよね。
チャーリー:聞きたいですよね。日本は物を長く使うにしても、やっぱり過剰に買ってしまう文化なのかなと思いました。食べれば食べるほどお腹も膨張することに慣れてしまったのかなと。
あさこ:それはありますね。街に出ればあれだけものが溢れていて、自分の課題を解決してくれる商品がたくさんあるので。
サステナビリティとファッション
つっちー:前々職で観光ガイドをしていたときに、ロンドンから来日したおしゃれな友達やパリジェンヌの方と会っても、東京の人が世界で一番おしゃれだって言うんです。みんな色々な服、新しい服を着ていておしゃれだと。でもそれって過剰な供給があってこそなのかなと思いました。
チャーリー:海外の人がおしゃれと言ってくれることも、実は「感度が高すぎる」や「感度のサイクルがすごく早い」という意味かもしれないですね。
あさこ:ラグジュアリーな文化もあれば、ストリートの文化もあって、それぞれ創意工夫の塊ですよね。エネルギーがあるなと思います。こうしたエネルギーと、ここ最近意識に上がってきたサステナビリティとのバランスは、Z世代の方は持っていますよね。
チャーリー:つっちーはZ世代だよね。
つっちー:そうなんです。一応Z世代とミレニアル世代の狭間ですね。
あさこ:私はジェネレーションXです。
チャーリー:揃いましたね。そしてこれからα世代がくると。もしかしたら日本のα世代の人たちの消費習慣は、まったく違うかもしれないですね。
あさこ:息子がα世代のど真ん中で、小学1年生なんです。なので、すでに感じていますね。
チャーリー:環境そのものが自分達の子供の頃と違うにしても、結構違いを感じますか?
あさこ:まだ小1なので自分で買い物はしないですけど、行動の端々から選択の仕方や価値の置き方が明らかに自分と違うなと思うことはありますね。もちろん否定はしないですし、面白いなと観察しています。
つっちー:サステナブルがある種バズワードになりつつある一方で、僕より下の世代はサステナブルであることが当たり前になってきているのかなと思います。サステナブルな取り組みはしているけど、あえて前面に押し出さないブランドが支持されるのかなと。
あさこ:サステナビリティな色をわざわざつけず、且つサステナブルな観点なしに、これから新規でビジネスを立ち上げるのは厳しいですね。
チャーリー:従来のファッション性だけで押し出してくのは、おそらくリスクしかないでしょうね。
あさこ:そうですね。他ブランドと競争する点は価格やデザインなど色々あると思うのですが、サステナビリティの観点は自然に含まれていきますね。
つっちー:その観点がないと選ばれないと。ちゃんと取り組んでいないところは、淘汰されてしまうんですね。そこが今の日本と感覚が違うのかなと思いました。デザインというよりは、サステナブルだから選ぼうみたいな。
あさこ:ブランドの価値の置き方を「サステナブルだから選んでよ」と手段にしている印象はありますね。
つっちー:こうした価値の置き方ではない、USやヨーロッパのブランドではどんなものがありますか?
あさこ:GANN(ガニー)というブランドをご存じですか?デンマークの女の子向けのサスティナブルファッションブランドで、すごくポップなイメージなんです。花柄プリントだったり、色合いもビビッドで、一見すると元気で若々しい雰囲気のあるブランドです。
チャーリー:ミニマリズムとはちょっと違う感じのファッションですね。
あさこ:可愛いなと思って見ていたプリントものの服も、リサイクルポリエステル100%だったりと、普通にサスティナブルな素材を使っています。しかも自分達がサステナブルなブランドであることは、あえて謳っていないんです。そこが結果として、ユーザーにイケてると思われているんですね。
#gannigirlsというハッシュタグがあって、GANNIの洋服を買った女の子たちが、#ootd(Outfit Of The Day 今日のコーデ)のハッシュタグと共に、自分のコーディネートをアップしているんですよね。このハッシュタグがついた投稿は8万件、9万件くらいあって。
チャーリー:すごいですね。トレンドのものが出てきたら、ハッシュタグをつけて「私これ持ってるんだよ」というのをステータス的に出すことが、社会の健康性に置き換わっているのはかっこいいですね。
あさこ:着ている方は純粋に「GANNIを支持している」「GANNIの姿勢が好き」と支持する姿勢なんですよね。デンマークやオランダはファッション以外でもサステナビリティの意識がすごく高いエリアですし、やっぱり日本のブランドも今後観察してみるのはいいんじゃないかなと思います。
チャーリー:日本だといまだにSDGsやサステナビリティに関わるファッションって、大人しい方に寄っていることが多いと思うのですが、ファッション性と思想にギャップを持たせる意味でも参考になりますね。
あさこ:本来ファッションは楽しむものですから。
つっちー:楽しむというのはSDGsのキーワードかもしれないですね。